新しい都市
第50話 新たなクエスト
釣竿の調子を見つつ数日遊んでいると、だんだん親方たちからのプレッシャーが強くなっていく。
3日前の言葉だと「おう。クエストひと段落したか。おつかれさん」だった。
昨日は「そろそろ祠に行ったか?」
今日は「おい! いつまでいるつもりだ!」
そう言われながら、祠へ行けと強制退去させられてしまった。
仕方なく鉱山へ向かうと、グスタフさんと出会った。
「ハッチさん。ドワ活ですか?」
「いえ。早く魔法陣クエ受けろと追い出されちゃいましてね」
「あぁ。私と同じですね」
「え? グスタフさんも?」
話を聞いていると、俺と同じ様に他のことをしていたら、強制退去となってしまったらしい。
「私はその帰りですけど、クエスト受けて良かったですね。ハッチさんもそう思うはずです」
ニヤリと笑って、すたすたと歩いて行ってしまった。
「まったく言ってることがわからない」
グスタフさんの言ったことを考えながら歩いていると、今度は村の出口でテッケンさんに遭遇する。
「お? テッケンさんもドワ活ですか?」
「ハッチさん。神官様のところに行く途中ですよ」
「俺も行くところだったんです」
タイミングが良いということで、一緒に向かうことになった。
もう途中の雑魚的も楽に倒せるが、2人の方が手間がかからなくて良い。
2層に降りて祠へ向かう時、ふと3層はどうなってるのか気になった。
「テッケンさんは3層に行ったことありますか?」
「あー。行ったことはあるけど……」
歯切れの悪い返事が返ってきた。
「えっと、なんか言えないやつですか?」
たまにクエスト関係で、言えなかったりすることもあるんだよな。
「いや、言えるよ。簡単に言うと強過ぎて瞬殺されちゃったね」
「は? テッケンさんで?」
「そうそう」
一応テッケンさんは、ずっと戦闘職をしていたから、スキルレベルは近くても動きはドワーフ村で一番良い。そんな彼が勝てなかったとなると、他の人も難しいんじゃないか?
規格外の人はいるけどね。
「パーティだったらどうです?」
「いや、そういう問題じゃ無いかな。正面から盾越しに真っ二つにされちゃったよ」
「まさか!? 溶かされたとかじゃなくて?」
「真っ二つ」
ハサミでチョキチョキと切る様に見せてくる。
「相手の名前は見れたんだけど、ソードマンティスだってさ。今までのカワイイ名前たちはどこへやら」
名前からして物騒だな。テッケンさんもお手上げかー。
聞いただけでも、行くのはまだまだ先になりそうだ。
「着いたね」
「神官様。クエスト受けにきましたー」
奥からヌっと出てきたけど、そこ壁じゃないのか!?
「まだ奥があるの?」
「待っていたよ! 君は……君もだね!」
え? テッケンさんも魔法陣クエ?
「お願いします」
一緒にクエスト進められるなら心強い。
神官様の後について、祠内の更に壁奥へ入る。
そこには本棚がたくさん置いてあり、村長の家よりも多い。
「えっとどこだっけな。あった。これと……これね」
神官様が持ってきた巻物は、俺とテッケンさんで結ぶ紐の色が違う。
「こっちが君」
青い紐の巻物を受け取るとクエストが表示される。
《魔法陣入門クエスト:アルフヘイム魔法工房へ行け! が開始されました。》
「「はぁ?」」
テッケンさんと声が重なってしまった。
「アルフヘイム魔法工房へ行け!」「アルフヘイム訓練所へ行け!」
そこは違うのか。
というか訓練所って、クエストも違う内容だったのかな?
神官様はニコニコしたまま何も言わない。
「アルフヘイムって、エルフ村とかでは無くて?」
そう言ったら、勝手にマップが表示されて、ルートが辿れるようになった。
「君たちは、そろそろ都市に行っても良いだろう。それはアルフヘイムに入るためと、工房と訓練所の紹介状だよ」
つまりこれが無いと行けない場所だったのか。まさか、新しい場所に行くクエストだとは思ってなかった。
「これっていつ」
「明日出発の馬車を用意しているから、準備しておいてね」
いきなり行けと言われてもな。やりたいことあったんだけど、強制クエストだったかぁ。隣のテッケンさんも苦笑いしている。
祠からの帰り道で話していると、皮加工クエも一応区切りはついているけど、もうちょっと育てたかったと言っていた。
俺の鍛冶もまだまだだけど、テッケンさんよりスキルも育っているのでマシだよな。弟子入り時期が遅かったから仕方ないんだけどね。
「強制だから仕方ないな。師匠も知ってるから聞いてみるよ」
「そうですね。じゃあ、また明日」
「またねー」
雑貨屋に戻ると、親方が出迎えてくれた。
「おう。荷物準備しとけよぉ?」
「あぁ。だから早く行けって」
「今日行かなかったら、荷物無しだったな!」
それは困る。屋根裏には素材が詰まっているんだ。
親方に引っ越し収納BOXというのをもらった。
荷物を大量に詰め込められて、新しい拠点が決まったら開くことができるようになる。と説明書きにあった。
それに全てぶち込んだら、みんなに挨拶だ。
「いきなりだけど他の街に引っ越すことになった。先に行ってるから、育ったら来てくれなー」
他の街というワードに引っかかったのか、予想以上に盛り上がってしまった。
「まさかの新都市!」
「掲示板にも載ってない情報だぞ!」
「しかし、ハッチ氏がいないとなると、一時的に生産レベルが下がるな」
「私たちが育てば良いのよ!」
周りの弟子たちもぶち猫さんの言葉に呼応しはじめる。
「そうだな」
「よし!」
「いっぱい作ってやろう」
なんか盛り上がっているな。
「あ、ハッチさん。着いたら少しで良いので配信お願いしますー」
「ん? 別に良いけど、ぶち猫さんが行った時じゃなくていいの?」
「そんなのまだまだ先ですよ」
「そう? じゃあ着いたら流してみるね」
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