第49話 500000G

 延べ竿を作ってから、さらに2日。

 1日2〜3本というスローペースで作成し、合計で6本作ることができた。

 作った竿を渡す人は決まっている。

 アラン、テッケンさん、グスタフさん、オトシンさんに1本ずつだ。今は雑貨屋の前で待ち合わせ中。


「よーっす」


「オトシンさん。ちょうど良かった。これが新作の竿ですよ」


「うひょー! かなり完成度上がったな」


「難しかったんですけど、新レシピにしては良いでしょ?」


 小躍りするオトシンさんは俺の話など聞かずに、「どの糸を使うか」とぶつぶつ呟き出した。もっと話をしたかったが、こうなっては放置するしかない。

 アランとの約束通り、釣竿を送ることにした。


「送り先は、『フレンド:サーモナー』へ」


《接続国が異なるため、配送料が5000ゴールドかかります。》


「YES」


《輸送時間はおよそ10日かかります。》


「輸送料金も高いし、こういう移動系の手間は何とかならんのかね。とか言っても仕方ないし、YESっと」


 了承すると配達NPCが釣竿を受け取りに来た。


「異国運送竜空便をご利用ありがとうございます。それでは」


 そのNPCは荷物を手に取り翼を広げると、ブワサァと砂埃を撒き散らしながら空へ飛び去っていった。


「ゴッホ、ゴホォ。うおぉぉぇぇ。口にまで砂が」


 毎回何なんだよ! 配達頼むだけで微妙にHP減るし、数秒盲目デバフも掛かる。

 なんだかアランの名前までイラついてきた。今までの名前はアランだったのに、ネテラだけ変えるから間違えやすいっての!

 身バレしそうだったから変えたとか言ってたけど、サーモナーって何だ? 鮭か? 鮭なんだろ?


「ハッチさん。竜空便頼んだの?」


 ハッと意識を戻されると、ひざまずいている俺の前にテッケンさんがにいた。


「え、えぇ。友達に頼まれたものがあったので」


「あの設定なんとかして欲しいよね。運営もそんなことに力入れなくても良いのにさ」


 テッケンさんの言う通り。ファンタジーにしたいのかリアルにこだわりたいのか、製作者は何を考えているのだろうか?


「いやいや、あれは物理演算をそのまま適用しただけですよ」


「「グスタフさん!」」


「むしろ手抜きの結果、いらない場所でも効果が出ちゃったんですねぇ。あの翼はどれだけのパワーを秘めているのか。面白そうです」


 そこらへんの科学的な話は俺にはわからんなぁ。

 それよりも、成果の品を渡してしまおう。


「2人にも、作った釣竿を渡しますね」


「おぉ! ありがとう」「これはなかなか……」


 反応は違うけど、どちらも喜んでいるようだ。

 あとは雑貨屋に1本。



《雑貨屋に【竹の延べ竿−】を出品しますか?》


 YES!


《雑貨屋に新しく【釣竿】ジャンルが出品されるようになりました。》


「よっしゃあああああ!」


「どうした?」「なんかあった?」「ん?」


 他の弟子たちも集まってきたので、今出品した一品を指差す。


「お? おぉ!?」

「ハッチ氏の念願が叶ったのか!」

「おめでとう!」

「やったな!」

「いや、待て」

「どうした?」

「値段が……」

「うん?」


「5000ゴールドか? ちと高いな」

「いや、0足りてねーよ」

「12……5? ゼロ5個っていくらだっけぇ」

「ご・じゅ・う・ま・ん! ゴールド!」

「すげぇ! スクショとっとけ!」


 そんなバカな!?

 確かに性能によって料金は自動設定されるけど、さすがに高すぎだろう。


 _______________

 ……

【劣化鉄の斧】 2000G


 <釣竿>

【竹の延べ竿−】 500000G


 _______________



「うわぁ……」


「出品した本人が驚いてるぞ」


「なんでだ?」


 プレイヤーたちを集めて会議した結果わかったことは、ホビー系のアイテムの基礎価格が高いことと、他の作成者が少ないというに至った。

 つまりわからなかった!


「まぁ、商品一個じゃわからないよな。もう一品出すには新しく作らないといけないし」


 自分が使う用まで出品したく無いからね!


「という訳で、ハッチさんには釣竿の出品を何度かやってもらいましょう」


「出品したら報告しますね」


「はい! それでは、ドワーフ村生産会議を終了します!」


 いつの間に仕切っていたかぶち猫さんが解散を告げる。


「「「「「イェアァァ!」」」」」


 普段はソロ活動万歳なのに、こういう時は団結力あるよな。

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