第48話 竹竿完成!

「これだけでも遊びとしては使えるんだけど、もうひと手間加えようか」


 小型のノコギリとヤスリを取り出して来た。ヤスリも目が細かくて俺では作れそうにない。


「これかい? これもドーインさんのだよ。10年来ねんらいの友達さ」


 そう言いながらも手は動いている。


「あまり細いとすぐ折れるからね。ちょうど良いところで切り落とすんだ。僕が狙うなら15cmくらいの魚だから……このくらいかな」


 先端の直径1mm程の太さで切り落としている。ノコギリも丁寧に丁寧に、片側から8割切れ込みを入れて、反対側から切り落とす。それを手早く数秒で行ってしまった。


「ハッチ君もわかってると思うけど、竹はけやすいんだ。端材でやってみよう。片側から切り落とそうとすると……」


 パキっ!と乾いた音がすると、切り落とせずに竹の皮1枚残して剥がれている。


「ね? この特性を使って竹の皮で作ったりもするんだけどね。僕は植物全般に関わってるけど、竹専門の職人にはかなわないね」


 アルデンさんが腰から布を2つ取り出すと、開いて見せてくれた。


「こっちは僕が作った方、もう片方は竹専門の人のだよ」


「うわぁ。綺麗」


 水晶のように透き通っていて、光が透過している。ちゃんと節くれもあるから竹なのだろう。だけど、俺にはパッと見てもわからない。


「わからない……何が違うんですか?」


「貸してあげるから調べてみなよ」


 2つを手渡されるとアイテム表示された。


【水晶竹の尺八+15】(レンタル品)

【水晶竹の尺八+30】(レンタル品)


「はぁ!?」


 なんだこれ!?

 プラスかマイナスだけじゃないのか?


「プラス・プラスとかマイナス・マイナスとかじゃないんですか!?」


「あぁ。まだその段階か。++は+2までの間のことで、+だけは0から1の間だね。+2以降は中間の表記は無くなるよ」


 なんだその情報は、素直に+1とかで良いじゃないかと思ってしまうが、製作者のこだわりなのだろうか?

 あらためて見比べて見るが、見た目じゃわからないな。+15も30も俺から遠すぎて比べようもないのかも。


「凄いということだけわかりました」


「それで良いんじゃないかな。それより続きやろうか」


 始めてだから教わった通りに、15cmサイズの……オイカワあたりをイメージするか。


「ここら辺で切れ込み入れて、反対から切り落とす」


 微妙にずれてしまったが、どうだろうか。


「これはヤスリで調整出来るよ。そのままヤスリをかけようか」


 バリを取るようにしながら、切り口に丸みを作っていく。


「良いよー。最後に……そういえば糸巻きは使う?」


「長い糸が調達出来ないので、べ竿(*1)にしようと思ってます」


 オトシンさんが新しい糸を作ってくれると良いんだけど、そこに辿り着くにはまだまだ時間がかかるだろうな。


「それならリリアン(*2)が必要か」


 近くの木箱から太めの糸を取り出して、いくつか渡してくれた。


「今回はそれを使おう。雑貨屋にも置いてあるから、自分でやる時も買えるはずだ」


組糸くみいと

 プラスもマイナスも無い、ただの白い糸。

 いつの間にか小さなつぼが置かれ、アルデンさんに手招てまねきされる。


「組糸を取り付けて、糸で竹に固定する。最後にニカワを塗って乾燥させる。やってみて」


 組糸を固定するのが難しいな。結び方に自信はあったけど、すぐにほぐれてしまう。ちょっと深めに巻き結びをしてから、糸でぐるぐる巻きにしてやった。そこにニカワを塗り込んでいく。


「ちょっと不恰好ぶかっこうだけど、こんなもんか」


「最初にしては上出来だよ。ちょっと貸してね」


 アルデンさんが俺の竿を掴んで、先端に手をかざすとニカワを塗った部分から湯気が出ている。


「これで乾燥できたかな。確認してみなよ」


【竹の延べ竿−】


「おぉ! ちゃんと竿になってる!」


「これで修練は終わり。モーディン様の魔法陣を学ぶんでしょ? がんばってね」


 なぜ知っている!?


「ははは! なんで知ってるのって顔に出てるよ。魔法陣を受ける人は村の職人全員に話が行くからね。それと、そろそろ村以外を見に行く時期ということさ」


 そういう情報網があるということかな?

 というか、村以外をってどういうことだ?

 その後に何度か聞いてみたが、モーディン様が教えてくれるとだけ言って、詳しい話は聞けなかった。




 _______________

 (*1)竿先にそのまま糸を結んで使う釣竿です。

 (*2)竿先に取り付けた竿と糸を繫ぐためのヒモです。


 巻き結びについては、画像検索していただいた方がわかりやすいと思います。上手く説明できなんだ。すまぬ。

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