第46話 竹の加工も大変よ?

 竹竿作成と木工クエスト消化のために向かっている。

 場所?

 聞かなくてもわかるでしょ?


「あら? 最近はよくいらっしゃるわね」


「えぇ。今日はクエスト消化と竹竿の作成にきました」


「竹竿? これかしら?」


 モウカさんが出したのは物干し竿。だけど、出来が良くて見入ってしまった。ツヤがあって凹凸も少ない。俺のポンコツ竿とは格が違う。

 じっくり確認した後に、ようやく返事してないことに気づいた。


「いえ。釣竿の方ですよ」


「あぁ。そっちですね。とにかく入ってください」


 中に入ると、いつもの混沌とした空間は無く、数人が作業しているだけだった。


「こんなに人いないのは珍しいね」


「ここには、ですわね。この先に新しいスペースが出来ましたの」


 アルデンさんも、その先にいるというので、言われるがまま進んでいく。水瓶が細工された扉を開くと、学校の体育館を何倍にも大きくした、だだっ広い作業スペースに出た。


「すげぇ」


 気の効いた言葉も出せず、ただ凄いとだけ言って、首を上下左右に振って見渡す。スペースの割には置いてあるものは少なく、遠くに小指サイズのアルデンさんと弟子たちが見える。

 アルデンさんがこちらに気づいて手を振っている。その横にデカい丸太が気になる。


「さぁ、行きましょう」


 モウカさんの後について行くと、丸太のサイズ感がオカシイ。


「このサイズの丸太って、初めて見たかも」


「これはポックル村に行く途中で、横道に外れないと見つかりませんわ」


「え? それって敵強いんじゃないの?」


 妖精族の村を繋ぐ街道沿いは、比較的に弱いモンスターしか出ないようになっているが、ちょっとでも外れると一気に強くなると聞いた。俺のスキルレベルだと、村から数キロ圏内が適正になる。竹林もこの範囲かな?


「行けるのは、私とあと2人くらいでしょうか。他の方はまだ難しいですわ」


 少し誇らしげにしているが、嫌な感じはしないな。


「今日は何の用で来たのかな?」


 アルデンさんに言われて思い出した。


「そうだった。竹の加工方法を教えて欲しいのと修練クエストです」


「それならちょうど良かった。修練も竹に関することだよ」


 おぉ。たまたまだけど一気に出来るなら助かるな。


 モウカさんは向こうのファンたちに合流し、アルデンさんがこっちに来て指導を始めてくれた。丸太の横でファンたちが動いてないので、キャラが分身したんだろう。必要があれば、NPCが増加して付き添ってくれたり相手してくれたりする。洞窟の監督と似たようなものだな。


「竹は持ってるかい?」


「今出しますね」


 カバンから取ってきた竹を何本か取り出す。アルデンさんはそれを眺めると、一度頷いて返してくれる。


「僕はこっちを使うから、それは自分で使うと良いよ」


 近くの箱から、似たような竹を取り出して来た。


「まずは乾燥なんだけど、さっき返したのと、他のやつを比べてみて」


 言われた通り比べてみると、アルデンさんに返された方はパリっとしていて、握った時に滑りづらい。


「そっちはさっき乾燥をしておいたんだ。ハッチ君はまだ乾燥アーツ持ってないでしょ?」


 そんなものがあったのか。木工スキルが成長すると、貰えるみたいなので、がんばって育てるよう言われた。


「乾燥はすべての木材に使うから、そこまでは取っておいた方が良いよ」


 俺が使っている木材は、全部乾燥してもらったやつを使っていたみたいだ。木材使うときは、親方が一度間に入る理由がわかったよ。


「枝は落としてあるけど、まだ雑かな。これを削って……」


 ノコギリで余計な出っぱりを落として、ヤスリで削るのは合っていた。太い部分と細い部分を分けて、竹竿は先端1.3m程を使うことになる。ポンコツ竿は、人族に合わせた分デカかったし、重くて使いづらかった。

 根本の太い部分は、器にも出来るし、柵を作る時の枠組わくぐみにも出来る。


「おすすめは水筒かな。一番サイズのあるところで、いくつか作っておくと便利だよ」


 なるほど。確かに水筒なら多めにあっても使えば良いし、今なら売れそうか。水分って細々取っていると、すぐになくなるんだよね。


「今回はハッチ君の希望通り、竹竿の作り方にしよう」


 やっほい!



 _______________


 ポックル村

 ●

 ↑

 ↑  ◇

 ↑ 

 ↑        ☆△

 ↑←←←←←←←←←○

          ドワーフ村

 _______________


 △鉱山

 ☆竹林

 ◇丸太を取って来た場所(推測)


 主人公の地図イメージは上記のようになっています。

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