第35話 オトシン襲来
窓の外を眺めると、朝日が昇り始めている。
この家からも『寝テラ』の広告が表示され続け、正直そろそろ別のに変えても良いんじゃ無いかと、そんな風に思い始めていた。
朝の作業を終え、いざログイン!
屋根裏から降りてくると、弟子の1人と遭遇。
「ハッチさん! ニュース見ました?」
「いや、今日は見てないけど?」
「ちょっとこっちに!」
腕を引かれて、雑貨屋前に行くと、裁縫と鍛冶の弟子達でごった返していた。
「この集まりはどうしたの?」
「ちょうど良いところに!」
ぶち猫さんに手招きされて近づくと、ホログラフにニュースが表示されていた。
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「その企業参入で何か変わったりするのですか?」
「内容の変化はありませんが、イベントの開催や専用アイテムが出来るかもしれません」
「活性化されるのは良いことですが、基準は厳しそうですね」
「その点は仕方ないと思っていただきたいです。各国調整のもと娯楽系が先に認可されるでしょう」
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「ハッチさんが来る前もやってたんですけど、新しく企業クエストが導入されると言ってました」
「全然わからないんだけど、……どういうこと?」
「参入する企業が、独自に作ったクエストを私たちが受けられるんです。詳細はわかりませんが、個別に依頼することもあるようです。配信で人気のある人とかは、特に選ばれやすいと思っています」
それなら俺はあまり関係無いな。
そんなことより、新しいスコップをなんとかしないと……。
「えええ。反応悪いなぁ」
「やることいっぱいあるんだよー。スコップ直したり、スコップ作ったり、スコップで掘ったり」
「スコップだけじゃないですか!?」
今、俺の頭はスコップしか無い。いや、10%くらいは釣りか。
そそくさと工房へ向かい、1人で鍛冶を始める。
スコップ2本の修理は問題なし。材料も少なめで短時間で終わった。
問題は作成だ。
材料は1回分だけで、少し
「恵比寿さま頼みます! 火精もよろしく!」
炉の奥で赤い小人が敬礼している。よし。
トンテントンテン叩きつつ調整していくが、途中でランクダウンするのがわかってしまった。スキルレベルが上がると、物によっては、途中でも完成度がわかる。
今回のは駄作。
【鉄のスコップ−−】
「くぅぅぅ! やっちまった! ……掘りに行くかぁ」
すれ違う弟弟子達には、全員から声を掛けられ、大体同じ言葉。
「ハッチさんダメでした? これからドワ活ですか?」
同じ生産をやってるから出る言葉。少しでも挑戦するアイテムは、8割失敗する前提。
「ドワ活行ってきまー」
「待て!」
「へ?」
親方に止められてしまった。
「お前、今日何の日か忘れてねーか?」
はて、何かあっただろうか?
「今日はワタシの弟子が来るんでしょ?」
「リリーさんの……? あぁ! オトシンが来るのか」
ログを確認すると、あと10分程で到着になっている。
「しまった。ドワ活は後にします」
村の入り口で到着を待っていると、大きな人が見えてきた。顔にペイントしてあって凛々しく、髪はサイドアップ。ボロい皮鎧を着込み、木の槍を構えている。思わず言葉が溢れてしまった。
「あんた。どこのアマゾネスだよ」
遠くにいて良かった。あの人こういうの言うと怒るからな。
近づいてくると、声が届くようになる。
「オトシンさーん!」
「ハッチか!? アマゾネスじゃねーぞ!」
聞こえてたのか!?
「嫌だな。冗談ですよー」
「まぁ、招待してもらったからな。今回は不問にしてやる。それより案内してくれ」
「はい。こっちですよー」
到着まで、道中の話を聞くと、乗り物とペットのことを聞けた。彼女が乗っていた毛の長い牛は、移動用の動物らしく、俺の招待を許可した瞬間現れたらしい。
今隣にいる小さな狼は、人族の中で人気の従魔で、リトルウルフ(メス)の『クルス』ちゃん。
かわいいなと思って撫でようとしたら逃げられた。
「ははは! 結構触らせてくれるんだけど、珍しいな」
俺には『ヤマト』がいるから良いもんね……。
「おぉ! ここがそうか! 配信で見てたけど、実物だと小ぢんまりとしているな」
「そっか……。ドワーフサイズだから若干低めなのかな」
ポックルとドワーフ系しかいなかったから、気づかなかったな。だとすると、アイテムの大きさも、人間サイズに調整したほうが良いのか?
「たのもー!」
「あらあら。元気な子が来たわね」
「リリーさんですか!? 弟子になりたくて来ました!」
オトシンさんは、リリーさんと弟子達に快く受け入れられ、早速中に入って行った。
「さて、俺の役目もこれまでで、ドワ活にでも……」
「待て!」
まさかの2度目。何かやることあったかな?
「お前の招待なんだ。最低限のアイテム作ってやれ」
《招待クエスト:鉄のナイフ・鉄のハサミ・鉄の目打ちを作成しろ が開始されました》
「こんなに!」
「報酬はこれだ……」
ピラリ。
「そ、それは。オリジナルレシピ(針)! やらせてください!」
オトシンさんありがとー!
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