第34話 釣具を作るために3
竹林に入ると、5分もしないうちに敵が現れた。
名前は『子いのしし』。1体のみだったので、囲んで攻撃したらすぐ倒せた。
「ナイーン! イジメみたいじゃないか!」
「グスタフさん落ち着いて、変なドイツ語出てます」
「僕ら紳士はこんなことをしたいわけじゃない!」
「ネズミを散々倒した人のセリフじゃないですよ」
変なスイッチが入っちゃったな。確かに今のは簡単に倒せたけど、他のゲームの傾向からすると、イノシシ系は結構ヤバい。何がと言うと……。
「アウチ! やっぱりイジメじゃないです!」
「油断するから……はい。包帯です」
「ありがとうございます」
重装備のグスタフさんですら一撃でHP1割を持っていかれた。軽装の俺とかテッケンさんだったら、倍は食らってるかもしれないな。やっぱり侮れない『子いのしし』。
ちょっと気になるんだけど、なんで『うりぼう』にしないのかね? 運営も翻訳サボりすぎじゃないか? これも報告案件だな。
「テッケンさんはこの名前どう思います?」
振り返るとテッケンさんがいない。どこ行ったんだ?
「プフィー! ハッチさんあそこ!」
「え? えぇ!?」
跪いた状態で、テッケンさんの頭が埋まっていた。
「どういう状況よ!? とりあえず出さないと」
「掘りますよー!」
グスタフさんにスコップを投げ渡し、それを使って2人で掘り起こすと、テッケンさんが安堵する。
「助かったー。 急に髪を引っ張られたと思ったら埋まっちゃってさ」
「これはトラップ?」
「いや、鳴き声が聞こえたからモンスターじゃないか?」
すると穴から大きめのモグラが顔を出してきた。
『いたずらモグラ』
「ジッジッジッジッジ!」
馬鹿にしたような声で、こっちを指している。
「イラつくやつだ!」
テッケンさんの剣も、空を斬るだけ。
その後も攻撃を続けたが、結局倒すまでに30分も掛かってしまった。穴にすぐ隠れるし、穴も4箇所も出来て、なかなか攻撃が当たらない。運良く、絡繰スリングの玉が当たったので、穴からはじき出すことが出来た。地上に出してしまうとしばらく動けなかったので、あとはタコ殴り。
「アルデンさんの仲間と行けって忠告、聞いておいてよかった」
「本当だな。まだ2種しか出てないのに、こんなに苦労してる」
3人の意見は、しばらく通って、戦闘スキルも上げた方が良さそうと一致した。とりあえず、近場のタケノコ掘りを開始。テッケンさんにもスコップを譲り、一緒に掘ってもらう。俺とグスタフさんの分で、合計10本も必要なので、それなりに大変だ。
タケノコ1本につき、敵1体というペース。竹も取りたいので、最終的にどれだけ戦ったか……。
「タケノコ完了! グスタフさんも良いかな?」
「こっちも終わりましたよ」
竹は4本ずつと少なめだが、長さがあるので今回は十分だろう。
モンスターの剥ぎ取り品についてだけど、いのしし肉と皮は均等に配分できた。
モグラは微レアみたいで、あの後1体だけしか出てこなかった。剥ぎ取ったモグラの爪と毛皮は何かに使えそう。
「生産持ちの2人にあげるよ。その代わり良いの出来たら優先してくれ」
テッケンさんに譲ってもらったので、有効な使い道を探すか。
帰り道も『子いのしし』を何度か倒し、やっとこ入り口に辿り着いた。もう帰ろうかと思ったんだけど、ニョッキリ生えている3つのタケノコが気になる。
「ハッチさんがやりたいなら良いですよ」
2人に許可を貰ったので、掘っていくと3本目を掘ってる最中に、スコップの耐久が残り少ないと気づく。だけど、もう少しで採れそうなので、そのまま掘ってしまった。
掘り終わったと同時に鳴った音は、何度も工房で聞いた。甲高い金属音で、どういう状況かすぐにわかる。グスタフさんも知っている音だからか、すぐに振り向く。
「ハッチさん!」
「お、おおおおぉぉぉぉ! 折れたー!」
一番性能の良いものを持ってきたのに、それを折ってしまった。2人に渡した物も、修理して使う予定なので、回収出来ない。
《アイテム破壊回数が一定数を超えました。アーツ【装備破壊】を覚えました。》
「え? 装備破壊?」
「んん!? 新スキルですか?」
「アーツ【装備破壊】を覚えました」
「おぉぉぉ!」「マジか!?」
2人のテンションが高い。どうやって覚えるか教えろと言うので、前述されてた内容を伝える。
グスタフさんは生産意欲が沸いたようだが、スキルが無いテッケンさんは難しい顔になった。
「やっぱり生産は必要かぁ。雑貨も武具も頼んだ方が良いしな」
「うーん。木工はお勧め出来ないし」
「やめてくれよ! ドワーフ村でアンタッチャブルなのあそこだけだぞ?」
他にも薬屋も危険だと思うが、まぁ木工工房が一番か。
あとは、……あそこはどうかな?
「テッケンさん!」
「ん? どうかしたか?」
「皮加工はどうですか!? 夜INも多いから、結構合ってると思うんですよ」
「そうか。皮加工は弟子もいなかったな」
そう。事前情報で、皮加工店は夜開業だとわかっていたので、弟子が付かなかった。やりたい奴は、最初から人族や獣人族になったと聞いている。
「だから、これは渡しますね」
預かった皮類は全部渡すし、グスタフさんも全部渡していた。
「うん。これで弟子入り頼んでみるよ……のじゃ」
もうずっとやってなかったのに、思い出したようにお爺さんぽくするの止めなよ。
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