第31話 魔力を覚えるために4

「お疲れ様。最近の子は、なかなか覚えるのに時間かかりますね」


「いやいや。ポーション使って3日だから、それなりかと思いますが」


「ドーインは1日で覚えました」


 親方すげー!開いた口が塞がらないとはこういうことか!

 何はともあれ、魔力を1に上げたことで、『魔力譲渡』というアーツを覚えられた。

 これを使うことで、ようやく魔道具の使用も出来るようになる。


「私もこのスキルは全員にお勧めしますね。これがあることで、魔道具のランタンも使えるようになります」


 右手で吊ってたランタンに光を灯し、プラプラと振っている。使い方レクチャーは結構助かるな。ランタンの頭頂部に魔力を流せば良いのか。


「ちなみに、そのランタンはおいくらですか?」


 ニヤリと笑う顔を見て、嫌な予感がした。


「君はこれを買うつもりですか? ほうほう。ドーインが聞いたらさぞ悲しむでしょうね?」


「いやいや、今はスキルも無いですし」


「今は!? ということは、いずれ作るということですね?」


《神官モーディンからの挑戦状:魔法陣入門 が開始されました》


「ぬおぉ!?」


 この神官からのクエストとか面倒くさいの決まってるじゃねーか!しかも待機じゃなくて、強制スタートのクエかよ!


「どうかしましたか?」


「あの、魔法陣の入門という……」「すばらしい!」


 言い終わる前に被せて答えてくる。


「さっそく開始しましょう! と言いたいところですが、あなたにも予定があるようですね。その予定が済んでから紹介状を渡しましょう」


 おぉ?急ぎでやらなくて良いのか。

 代わりに画面端にアイコンが点滅している。そこを確認すると、招待していたオトシンの到着予定日数と、まだ終えてないクエストが表示されている。


「今の予定が済んだら、また来なさい」





 帰り道に、終えてないクエストを確認すると、3個も溜まっていた。

《木工修練4》

《鉄の斧(3)の納品》

《薬草の採取》


 クエストとしては、そこまで難しそうでも無いけど、次に行く前に釣竿が欲しい。

 糸と竿は何とか出来そうだけど、針が問題だな。


「何か悩みかい?」


 声で意識が戻されると、すでに雑貨屋に入っていた。声の主はリリーさんか。


「ちょっと針をどうしようかと思ってまして」


「針ならアタシが持ってるよ?ほら」


「いや、これってマチ針ですよね?俺が欲しいのは釣り針で……」


 これを曲げたら使えるんじゃないか?


「リリーさん。これ作ってるのって」


「金物は全部旦那だよ」


「よし! ありがとうございます!」


 灯台下暗し! こんな近くに針があったなんてな!




「おやかたー! 針のレシピを教えてください!」


「ん? 針か……」


 親方の視線は俺で止まったまま。


「ハッチさん。親方フリーズしてますけど、何を言ったんですか?」


「いや、針のレシピくれって言っただけなんだが」


 話してると、ようやく親方が動き出した。


「お前は何の針を作りたいんだ?」


 そのセリフの後に項目が出てきた。


 __________

 既存レシピ 針

 ・縫い針→詳細

 ・時計針→詳細

 ・治療針→詳細

 ・釣り針→詳細

 ・針金→詳細

 __________


 試しに縫い針の詳細を押したら、名称が多すぎて目が痛い。

 何十項目あったのか……。さらに針の太さまで出てきてわけがわからない。

 釣り針も名称は多いけど、こちらはわかる。

 ただし、細い針は習得出来ないし、グレーになって選択出来ない物も多い。


「どうしよう。ほとんど習得出来ない」


「そんなら、針金からオリジナルレシピで作った方が良いな」


 そういう方法もあるのか。


「それでお願いします」


『針金2mm』を購入し、『オリジナルレシピ針』は高くて買えなかった。

 ここでもポーションの痛手が大きい。


「ハッチさんいつも金欠ですね」


「俺のせいじゃない! クエストに必要だったんだ! くそぉ」


 そんな俺に、親方がかけた言葉は残酷だった。


「釣り針欲しかったら、骨針先に作りゃよかったのによ」


 骨針だと?そんな……、まさか!


「骨針のレシピは……」


「あの位だったら、木工で柄が作れたら出来るだろ」


 俺はどれだけ遠回りしていたんだ!間違ってはいない!金属針はそのうち必要になる。でも、早く釣りするなら骨針が。


「あぁ。ハッチさんがまた白くなってる」


「またですか?」


「とりあえずスクショ」


「今日は海老反り無し?」


 お前ら全部聞こえているぞ。誰1人からも慰めの言葉など無い。

 足元に茶色い物体がいる。


 目の前には、膝の上に乗った土精霊が肩をすくめている。


 そのポージングは! アメリカンな俳優をモノマネする芸人みたいだ。

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