第30話 魔力を覚えるために3

 苦労した甲斐もあって、魔力ポーションを得ることができた。

 あとは実践して効果があるかどうか。


「今日もお願いします!」


「はい。では、始めましょうか」


 神官様に見守られている中、ポーションを飲んだら開始だ。

 ごくり。


「クリエイトストーン!」


 ひたすら連呼。

 右手から溢れる石には目もくれず、MPバーを眺めながら叫び続ける。

 側から見たら以上な光景だろう。

 肌着のハーフドワーフが、天井を見ながら叫び続けている。さらに右手から石が溢れているという。


「ふぅ」


 MPバーが一瞬空になったが、すぐに回復しバッドステータスは回避できた。


「ポーションとは、なかなか考えましたね」


「そのために、薬屋の試練を超えないといけませんでした」


「いずれやることですから、先になっただけですよ。1つ良いことを教えてあげましょう」


 神官様が俺の横に座り、両手を合わせると青白く輝き出した。


「これはメディテーションです。これでも魔力は回復出来るんですよ」


「おぉ! それは覚えられますか?」


「まだまだ先ですね」


 期待した分、ガックリきた。

 でも、一応覚えておこう。

 メディテーションね。


「ちなみに覚え方とかありますか?」


「魔力操作のスキルレベルを、5まで上げたら覚えられますよ」


 メモメモ。

 まだ1にすらなってないから先は長いけど、便利そうだから覚えて損は無さそうだ。


「そろそろ回復したのではありませんか?」


「ん? 回復してます。クリエイトストーン!」


 ひたすら連呼の繰り返し。

 持続回復だけど、2回も繰り返せば効果は切れるし、財布に優しくない。

 帰りに鉱石いっぱい取ってこないと、赤字で何も出来なくなっちゃう。


 ……今日の成果は0.4か。


「やっと半分かぁ」


「早い方ですよ。ポーションが無ければその半分でしょう」


 確かにポーションが無ければ、さらに時間がかかっていた。

 今日持ってきた4本も無くなったし、ここまでだな。


「そういえば、この階層は危ない魔物とかいますか?」


「何が危ないかに寄りますが、1層より2種類魔物が増えてます」


「その魔物は……」


 ニコニコしてるだけで返事も無いや。

 聞いても答えないってことかな。

 前回の採掘時は、新種なんて出なかったけど、警戒だけはしておいた方が良いか。


 鉈をすぐ取り出せるようにして、いざ採掘!


 新しくなったツルハシは、当たり心地が良く、良い音を聞かせてくれる。

 カンカンコンコン。

 コンコンゴロリ。

【鉄鉱石】

 ほとんどマイナスは出なくなった。やっぱり1層までは楽な分、使い勝手の良い鉱石が出難いようにしてるのかな?


 コンコンゴロリ。

【石炭−】

 石炭も出るようになってきた。


 ヂュー! ヂュー!

 ネズミも2体に増えて、対処も大変になった。


「これは……親方達の防具が無いと死にかねないぞ」


 結構噛みつかれたのに、HPはまだ8割以上残っている。見た目にも傷は少なく、良く出来ているおかげだろう。

 修理しつつ大事に使わないと、替えが作れず泣くことになりそうだ。


 剥ぎ取りナイフも使いやすくなっている。

 そういえば、ツールの性能アップについて聞いてなかったな。

 まぁ、良いか!


 採掘を継続していると、面白い鉱石が出てきた。

【??鉱石】

 これは帰って親方に見せた方が良いかな?

 そう思ってたら、シャカシャカ鳴る音が近づいてくる。

 鉈を構えて臨戦態勢を整えていたが、それを見た瞬間動けなくなってしまった。


「キシキシキシキシ」


 時々カチカチ鳴らしながら節を軋ませる存在。

 人間のハーフサイズと言えどムカデは予想以上に恐ろしく、持っていた謎鉱石を落としてしまった。

 たまたま運が良かったのか、その鉱石をくわえると、そのままどこかえ去って行った。


「鳥肌がおさまらない……。今日は帰ろう」


 帰り道も何度か敵に遭遇したが、ネズミばかり。さっきのムカデが新種なら、もう1匹はどんな生物なのか。考えるだけでも気が滅入る。

 0層に到着すると、未成年を連れた監督に出会った。


「そうか。監督に聞けば良いのか」


「呼んだか?」


「監督! 2層の魔物について聞きたいんですけど」


「……近くで聞かせろ」


 謎鉱石とムカデについて尋ねてみると、監督は一瞬ニヤリと笑った後、情報料の催促と手紙を渡してきた。


「これは良い話だ。500Gいただくぜ!」


 ポーション代で減った上にこれ以上とは。また、残り50Gになってしまった。

 村に着いて、一休みしながら手紙を開けてみる。


《”ドワーフ鉱山に住むケイブセンチピード:2層から出現し、時折に遭遇することがある。彼らは鉄鉱石より上位の鉱物を好み、採掘時に現れることが多い。小型ゆえ力は弱く、比較的倒しやすい部類。ケイブセンチピードの外殻は、軽装防具に加工可能。”》


「くっそ! レアの良品ドロップする奴じゃないか!」


 広場の砂は温かかった。


_______________


*メディテーションの取得を、魔力:LV5⇨魔力操作:LV5に変更しました。

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