第28話 魔力を覚えるために2

 カツカツと高い音を鳴らしながら降りてきたのは


「ん? ハッチさん?」


「あ、テッケンさん。道具の使い心地どう?」


「前より良くなったよ。というかどうして2層に?」


 これまでの経緯を話すと、笑みが溢れ出した。


「ラッキー。どこを探しても教会無かったんだよね。ついてって良い?」


「どうぞどうぞ。というか灯りが無かったので困ってたんです」


 テッケンさんの灯りを頼りに、2層をくまなく探すと、壁の一部が光っていることに気づく。


「ここが怪しいですね」


「ただの壁にしか見えないけど……」


 綺麗に長方形をかたどった光の枠。その端っこを押してみると、扉のように壁が開いていく。


「おぉ。こりゃわかんねぇわ」


 面白そうに眺めているテッケンを押し込みつつ中に入る。


「いらっしゃい。初めての子だね」


 白い法衣をまとった男性は、穏やかそうな顔で出迎えてくれる。身長も高く、ドワーフのずんぐり感は薄れているけれど、背後にあるハンマーと斧の旗が同族と示していた。


「え? ハッチさん。この人もドワーフなの?」


「たぶん……ハイドワーフに進化したんだと思う」


 俺達の様子が面白いのか、笑いを堪えつつ、観察している。


「それより用事済ませようよ」


「そうだった。神官さん。魔法を教えて欲しい」


 目を細めて、しばらくテッケンさんを見つめると、一息吐いて答える。


「あなたは成人だけど、まだ許可を貰えてないね。これを持って村長に会ってきなさい」


 背後の箱から、巻物を取り出すとテッケンさんに渡す。


「お。おぉ!? クエストきた!」


「おめでとう?」


「ありがとう! これでやっと市民権が貰えるよ」


 良くわからなかったので聞いてみると、成人から開始すると、放浪者の扱いになるらしい。特別困ることもないけれど、居心地が悪かったらしい。

 それだけ言うと、松明を俺に押し付けて、村に戻ってしまった。


「えっと、俺も用事を……親方から奉納品です。」


「確かに受け取りました。ドーインからですか、小童が立派になりましたね」


 え? 親方が小童ですと?

 その言葉だけで、とてつもない畏怖を感じる。

 とりあえず、やっといた方がいいか。


「どうしました? 急に両膝までついて」


「いえ。何と無くやったほうが良いのかと」


「私の前でなく、神像の前でやりなさい」


「は、はい!」


 かえって叱られてしまった。

 要件を聞かれたので、魔力について話す。


「ふむ。それなら、しばし訓練を致しましょうか」


「よろしくお願いします」


《修練クエスト:魔力を覚えろ! が開始されました。》


「では、早速魔法を使ってみてください」


 言われた通り、クリエイトストーンを使うと、ニコニコと頷いている。


「それを魔力が無くなるまで続けてください」


 何回位作ったか、祠の中に小山ができている。魔力が無くなった状態は2度目だけど、前回なった成人の時は、MPバーがギュンギュン回復してたんだよね。

 今は、身体能力低下のバッドステータスがついている。

 おかげで魔力のスキルレベルが0.1上がった。


「うんうん。それを繰り返して魔力レベルを1にしてください。そうだ、荷物全て隅の箱に入れておいた方が良いですよ」


「え? 装備もってことですか?」


「そうです」


 逆らっても良いことないだろうし、黒パンだけ残して、お金含めて全部突っ込んでおく。

 これを、早くてあと10回か……大変だけどやるしかない。



 みんなに教えてあげよう、バッドステータスって重ねがけされるんだよ。それが限界になると、衰弱死するんだ。


「黒パン消えてる! あぶねぇ」


「だから全部って言ったのに」


 神官様の杖で叩かれると、デスペナルティのバッドステータス表示が消えて行った。


「次もなったら治してあげるから。がんばって」


 釈然としないが、促されるまま、再度石を作っていく。

 それから、衰弱死を3度繰り返したところで、その日はタイムアップ。

 驚くことに、この日だけで、スキルレベルは0.2上がった。


「神官様。せめて早く魔力回復できたりしませんかね?」


 笑顔が眩しい!

 そして、何も言わない!


 これはやり方を考えないと、無駄に時間を過ごすことになるぞ。

 戻ったら親方に相談してみよう。


「親方! 助けてください!」


「そうなると思ってた。あの人は教える時は、鬼になるからな」


 やっぱりそうなのか。

 見た目だけは、菩薩に負け無い穏やかさなんだが……。


「ついでだし、教えてやっても良いぞ。ところで、鉄鉱石はどうした?」


「あ。行ってきまーす!」

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