第27話 魔力を覚えるために1

「そうぞうしい奴だな。で、どうした?」


「こいつ!」


「んー?」


 両手で捕まえてた奴を、開いて見せる。

 親方だけでなく弟子達も見るが、弟子には見えていないようだ。


「なんだ土精霊か。こいつがどうした?」


「え!? やっぱり知ってるんですか?」


 周りもザワつき始めた。

(土精霊だって)

(見えないぞ)

(私もわかんない)


「静かにしろーい! とりあえず離してやれ」


 地面に下ろしてやると、親方に手を上げ、おいっすと挨拶してから走り去って行く。


「土精霊。炉の中にいたのは!」


「火精霊だな。どれも木端の小精霊だが、色々手伝ってもらっている」


 親方の話だと妖精種が多い地域に集まりやすく、魔力が発現されると、見えるようになるらしい。

 グスタフも言ってなかったけど、これも禁止ワードだったのか。魔法が解禁されたから、周りにもワードは聞こえているのかな?


「親方に何か聞こうと思ったんだけど、何だっけ?」


「知るわけねぇだろ」


 魔力に関係してたのは覚えてるんだけど…。


「ハッチさん。配信で見てたけど、動く機械は何だったの?」


「ぶち猫さん!それだよ!」


 荷物を漁って、銀色の卵を取り出す。


「これを起動させようと思ったんですけど、うまく魔力使えなくて」


「お前…機械言語を持ってたのか?」


「えっと、はい」


 機械言語を取得するのは難しく、先天的に持って無い場合は、時間をかけて覚えるしかない。親方は時間をかけたみたいで、相当苦労したらしい。


「とりあえず、魔力の流れを覚える必要があるな。新しい魔法は覚えたな?」


「クリエイトストーン!」


 四角い石が出来上がった。


(魔法だ!)

(あとは何があるんだ?)

(ストーンだから飛ばすんじゃ無いか?)


「以上です」


 周囲から一斉にため息が漏れるが、魔法初心者に期待しすぎないで欲しい。

 魔法を使ってた様子を、じっくりと見ていた親方の目が光る。


「なるほどな。お前は魔力操作を使ってないから、その卵が展開出来ないんだ。魔力操作っつうと、祠に行くしか無いか」


 結構長くドワーフ村にいるけど、祠なんて見たことないぞ。他の弟子達を見ても、知ってそうな人はいない。


「まぁ、知らないだろうな。鉱山の2層にあるから、成人しないと入れない。あと村長の許可もいるからな」


「村長の許可なんて持ってませんけど?」


「いや、持ってるはずだ。称号のところにあるだろ?」


 そんなのあったかなと、称号を探ってみたら、怪しいのが1つあった。これも効果無しとスルーしてたけど、もしかして…。

 一番最後に載っている『ドワーフ村出身』の称号。


「あったな。それが村長の許可だ」


「じゃあ、このまま行っても良いんですね?」


「待て待て、一筆ぐらい書いてやるよ。その方がやりやすいだろう?」


 親方マジイケメン!一生ついていきます!

 ゲンコツ無ければ…。


「では皆んな。しばらく修行に行ってきます!」


「ついでにお使いと、鉄鉱石取ってきてくれ。2層ならマシなの取れるだろ」


《お使いクエスト:神官に奉納品を届けよ! が開始されました。》

《納品クエスト:鉄鉱石を3個納品せよ! が開始されました。》


 しっかりクエストを受けるのは、久しぶりかもしれないな。手間はかかるんだけど、何気に報酬金は良いんだよね。


「行ってきまーす」


 監督を伴わない初の鉱山。

 そう思ってたが、行くまでの短い距離で接敵。


「まさか、ここもネズミ出るのかよ!」


 いつもは監督が守ってくれていたのか?

 どちらにしろ対処しないと。


「えいやぁ!」


 俺の振りかざす鉈に、反応無くすっぱりと切れてしまった。


「うそぉ!?」


 スキルも鉈は持ってないし、器用か力か?

 成人力のおかげ?

 うまく倒せたんだから良いか。


 鉱山に到着すると、0層は相変わらず人でごった返している。

 なぜかわからないが、俺とグスタフさんの鼻歌が定着しているんだよね。


「掘ってー掘ってーまた掘ってー」「そうてん、そうてん、また装填」


 横目で見つつ先に進んでいく。

 1層に出てくるネズミがスパスパ切れて、鉈がこんなに便利だったとは知らなかった。

 グスタフさんめ、こんな楽に倒してたのか…。

 これからは俺も同等レベルに成長してやるぞ!

 そんなことを考えつつ、2層に行く階段手前まで、ささっと辿り着けた。


「ここが2層か」


 周辺は薄暗く、どうにも見づらいと思っていたが、よく考えるといつも監督がランタンを持っていた。

 くそぉ!

 一番大事な物を用意し忘れてるじゃないか!

 グスタフさんも毎回松明持ってたよ!


 一度帰らないといけないか…。

 手間だけど戻ろう。

 と思っていた時、階段から音が降りてくる。

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