第24話 成人の儀式2

「回復したようだな。それでは、これより洗礼を行う。」


 言い終わった後、チラチラこちらを見ている。

 どうぞ先を続けてくださいと言ったほうがいいのか?


「悪い!説明忘れてた。司教様の言葉に1つ1つ返事するんだよ。必要な事だからね」


「そうだったんですね。」


 ロリ司教様に向き直り「はい」と返事すると、やっと続きを言い始めた。


「おぉ!神よ。我らドワーフに新しき原石が生まれました」

 チラッチラ。


「はい」


「これより彼の者は、真なるドワーフになる為、その生を捧げるでしょう」

 チラリ


「はい」


 これ毎回チラ見されるのか?

 結構恥ずかしいんだけど、と思ってフーギンを見ると笑いをこらえている。

 まさか冗談で言われたのかと思ったが、司教様の言葉で振り向かされた。


「種族と名前を神に捧げるのだ」


「ハーフドワーフのハッチです」


「今ここにハーフドワーフのハッチを成人と認める!」


 どこからか取り出した杖を掲げると、先端に光が集まり俺に降り注ぐ。

 この演出かっこいいんじゃない?ちょっと輝いてるかも。


《称号:大地神グランの加護 を得ました。》


 おぉ!?

 まさかこんなところでも称号が得られるとは…期待してましたけどね!

 _______________

【大地神グランの加護】

 付与効果:大地属性の魔法適正

 _______________


「魔法きたぁぁぁぁ!」


「まだ途中だ!」

 ボコん。


 HP半減してしまった。

 見た目関係なく、ドワーフの1打は重い。

 司教様から何かの棒を手渡されると、棒のスイッチを押せと言われる。


「これか?」


 ボタンを押したら、魔力ゲージが表示されるようになり、MPゲージが吸い取られていく様子が見える。


「これ、いつまで…あ、なくなる」


「もう良いぞ」


 倒れる前に話しかけ欲しかった。

 すでにMPは空っぽです。

 俺から棒を取り上げると、奥の祭壇に奉納する。


《大地属性魔法が解禁されました。》


「おめでとう。これでそなたもドワーフの仲間入りだ。いずれ成長すれば進化できるだろう」


「おぉ?ハーフドワーフからドワーフになれると?」


「そうだ。ドワーフの先はハイドワーフになれる。たまにならない奴もいるがな」


 ほっほぉ。

 これは重要項目ではありませんかな?

 人も進化できるのかな?


「せっかくだから1番簡単な魔法を教えてやろう」


「ぜひ教えて欲しいです!」


「そなたは…大地属性か。クリエイトストーン!」


 ロリの右手が光り、手のひらサイズの四角い石が現れた。


「やってみなさい。」


「はい」


 同じように手を出して声に出す。


「クリエイトストーン!お?おぉ?」


 丸い石が出来ている。


「四角じゃないのはどうしてですか?」


「イメージで変えられる。最初は丸と四角だけで、成長すると大きさも変えられるようになる」


 なるほど、そんな仕組みになっているのか。よく考えるとスキルと似ているかもしれないな。『叩きます』もイメージで作りたい物変えられたよね。


《日本地域。全体アナウンス。日本地域。全体アナウンス。》


《魔法スキル取得者が100人を超えた為、以降解禁されます。各地域の神より洗礼を受けることで取得できます。》


 今日の釣果は大量で、そろそろキャパオーバーしそう。


「これで君も成人だな。おめでとう!」


「神は常に見守っているぞ。おめでとう!」


 今日は色々もらえて最高じゃないか!

 リアルの成人でもここまでしてもらってないぞ?

 これは1つ恵比寿様に感謝を!


「ありがとうございます!」


「そ、その変なポーズはわからんが…おめでとう…」


「…喜んでくれてはいるか」


 これで終わりかと思ったが、まだ続きがあった。

 今度は俺のスキルに関係する話だとか。


「そなた、機械言語を持っているだろう?」


「確かに持ってます」


「ちょっと待て。むむーむん!」


 ロリが唸る姿を眺めていると、システム表記が出現。


《『機械言語』がONになりました。》


 AIにここまでの権限が付けられてるのか、すごいな。

 これも何かのイベントか?


「これで機械言語が使えるようになるだろう。最初はカタコトだが、成長すると難しい言葉も理解出来るようになる。そうだな…フーギン。」


「はいはい。これでしょ?」


 ポケットから取り出したのは、鉄の卵。

 よーく見ると、薄らと幾重いくえにも継ぎ目が入っている。

 俺が覗き込んでいると、フーギンが卵を地面に置いて手をかざす。


 小さくカシャカシャ鳴り出し、徐々に卵が形を変えていく。

 数秒後には形が整い、見慣れた動物になっていた。


「どの子も最小サイズはネズミで固定されている。この子に良質の鉱石や宝石。もしくは、加工した道具や武器を与えると成長するんだ。そして、大きくなると、司教の横のやつだな」


 司教を見ると、先ほどまでいなかった巨大な金属のサイがジッと立っている。


「見せるために出しただけだからな、閉まって見せよう」


 サイをひと撫でするとカシャコン小気味良いリズムで卵になっていく。大きい卵だが、それでも元のサイズと比べたら、ロリの身長程度とかなり小さくなっている。


「これは機獣といってな、機械言語を持ってると指示できるんだ。私の子まで成長させないとしても、成長度合いで頭は良くなる」


「この子は君にプレゼント。良い名前つけてやってね」


 そう言ってフーギンが卵をくれた。

 とにかく言えることは一つだけ。


「最高の1日だ!」

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