第14話 鉱山1層

 無くした銅の玉を探すが、どこにも見当たらない。

 丹精込めて作ったのに、一発目で1投目で無くすとは…。

 釣りが下手な時に投げたルアーを思い出す。

 無駄に高いルアーを買ったんだよな。

 今思い出すだけでも、あれは泣けてくる。


「他の動物来る前に掘れ掘れ!」


 まずい。

 考えてる暇なんて無かった。


 0層と比べても鉱質が良さそう。


《鉱物探知が0.1上昇》


 上がりづらくなってたのが、一度で上昇した!

 難易度が上がったかな?


 ツルハシで掘ってみるが、一発で硬さがわかる。

 普段より弾き返される感覚が強く、なかなか採取出来ない。


「監督!硬いです!」


「0層と比べりゃな。そんだけ良いのが取れる。」


 とりあえず1個掘れるまで頑張ってみるか。





 5分もかかってしまった。

 それでも掘れたのは劣化鉄鉱石。


「次の動物来たぞ。」


 一回ごとに戦闘はきついぞ!?

 くらえ。ツルハシ!


 劣化銅鉱石。

 くらえ。トンカチ!


 石片×5。

 くらえ。手斧!




「監督!戦闘がつらいです!」


「がんばれー。」


「うぇーっす。」





 石!石!石!石!石!

 やった!【鉄鉱石−】が出た。


「やったな。それを最低であと3個だ。」


「もうHP半分…。」


「がんばれー。」


「うぇーっす。」




 投げる。掘る。叩く。掘る。投げる。掘る。叩く。掘る。


「よし。取れたな。ちなみにここを掘ると出やすかったぞ。」


「そういうのは先に言って!」


「せっかくだから掘るか?」


「む。攻撃も受けなくなったしやってみるか。」


 言われた所をコツコツ叩いてみると、若干硬度が弱そうな感触がある。

 ツルハシを当てるとさっきより掘りやすい。


【鉄鉱石−】


「監督の言った通りだ!」


「もうちょっと探知育てないと厳しいな。」


「動物も出てこないな?もっかい掘ろう。」




【劣化メノウ石−】


「あれ?宝石?」


「ヂュー!」


 くらえ!石!

《投擲がLV3に上昇》

《スリングLV0を獲得しました。》


 お?新スキルか?

 スキルLV2で新スキルが獲得できる時と出来ない時があったんだが、LV3でも貰えるんだな。


 ネズミを解体して…。

 お、重い。


「重量制限だな。これ以上だと歩けなくなる。」


 これが限界か。


 ヒィヒィ言いながら村に戻ると、ちょうど武具店の小間使い達が繰り出すところだった。


「ハッチさんは戻りですか?」


「ちょうど戻ったところだよ。そっちはドワ活?」


「「「「はい!」」」」


「いってらっしゃい。」


 みんなでゾロゾロと、一緒に行ってるのがうらやま…。

 いや、あんだけ人いたら邪魔か?


 とりあえず邪魔なのは買取してもらおう。

 いつもの買取店へ。





「肉は食わないのか?あと皮は皮加工店行けばもっと高く売れるぞ。」


 おぉ。良いこと聞けた。


 それなら食品店で塩買って、皮加工もこの前のところだな。




 もう日が沈み始めてるが、大丈夫かな?


「すいませーん。皮を買ってもらいたいんですけど。」


 小窓からだったな。

 ここで待ってれば良いんだろ?


「何してるの?」


「何って皮を売りに。ん?」


 声の方を見ると扉が空いている。

 それに俺より一回り小さい少女もいる。


「え?え?」


「皮の買取なら中入って。」


 言われるまま入っていくと、しっかりと革製品が並んでいた。

 ただの民家じゃなかったのか?


「てっきり小窓から受け渡しだと思ってた。」


 俺の呟きが聞こえたのか、気づいたようだ。


「あなた。この前の革靴直しに来た人ね。日中は基本寝てるのよ。次からは夜に来て。」


 なるほど。俺は寝てる所を起こした上に、すぐに修理してもらったのか。

 塩対応にもなるよな。


「ほら、売りに来たんでしょ?」


 そうだった。

 取ってきた皮を渡す。


「なるほど。使えなくもないけど、下手ね。」


 顔を上げて俺を眺めると何か納得していた。


「いいわ。初回だから80ゴールド出してあげる。」


「そんなに!やったな。」


 解体用のナイフを見せてくれと言われたので、一番良いのを渡して見てもらう。

 モノクルをつける少女ってのも面白いな。


「やっぱり素材が悪いわね。1層に行くようになったら早く更新しなさい。どんなに腕が良くなっても、素材が悪いと限界があるわ。はい。」


「素材が良くなったら、もっと綺麗に切れますか?」


「解体技術も必要だけど、今よりは切り口が綺麗になるわね。解体は付き添いのドワーフに教えてもらいなさい。」


「なるほど。ありがとうございます。」






 雑貨屋に戻るとぶち猫さんがトンカン叩いているのが見える。


「親方戻りました。」


「取れたか。見せてみろ。」


 鉱石を手にとって、軽く眺めるとすぐに返してきた。


「そんなもんだろ。全部で1個分だな。」


 ってことは、失敗したらまたネズミ地獄だな。

 親方が手をヒラヒラして寄越せと伝えてくる。

 今渡したと思うが?


「取ってきたんだろ?面白いの。」


 あれか!

 インベントリから、メノウ石を取り出す。


「なんかあると思ったが最低ランクか。だが、1層で取れただけでも運が良いな。」


「それは観賞用ですか?」


「本当は成人してから言うんだが、持ってきたからな。宝石類はな、装備アイテムの強化に使うんだ。メノウは呪い耐性がつく。こいつで何か作るなら銀を使え。」


 銀なんて見たことねーぞ?

 それにしても強化アイテムか。

 微レアだな。


 とりあえず、すぐ使えるわけでもないし、しばらく屋根裏の肥やしかな。

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