第10話 第2陣

 ログイン後は、すぐに広場へ向かう。


 最近気づいたんだが、セーフティゾーンの共用部分は動画が撮れる。

 第2陣お迎え動画として撮影しておくことにした。


「録画開始!」





「年齢制限が広まってるとは言え、前回の惨状を見てると。やっぱり気になるよな。」


「ハッチさん!やっぱり行くよね。」


 テッケンさんが横道から走ってきた。


「もちろんだよ。テッケンさんも気になる?」


「うん。村の外行くにしてもソロだから…あ。ソロじゃからな!」


 テッケンさんはドワーフプレイをしたくて、爺さん口調にしている。ただ、全然慣れていないから、ほとんど素で話してしまっている。


「前も言ったけど、普通にしゃべったほうが良いと思うよ?」


「もうちょっと試すんじゃ!ソロソロ広場じゃな。」


 あと1、2分で広場に着くところだったが、目の前で急に歪んだ空間が現れる。

 テッケンさんと顔を見合わせるが、お互い知らない様子。歪みに目を向けると、徐々に暗い闇が渦巻くと、見たことのある人物が現れる。


「「え?」」


 その人物は、初ログイン時に広場に現れたドワーフ。

 闇から出てくると、足早に広場へ向かっていく。


「ちょっと、ま…。」


 俺が追いかけようとすると、テッケンさんに止められる。


「待った。前も同じ方向に戻って行ったから、帰りも見てみよう。」


 確かに帰りも気になるので、このまま待つことにした。





「じゃあ、今も録画してるん…じゃ?」


「うん。どうやらプレイヤーネームとかは表示されないようになってる。特定キャラの除外も後から出来るから、問題あれば消すよ?」


「いや、別にそのままで良いんじゃよ。お?例のドワーフが帰ってきたぞい。」


 広場の方からドワーフが帰ってきた。


「さて、どうなるか。ハッチさん、後で私にも動画送ってね。」


「もちろん。」


 普通に歩いているだけなのに、異様に早い。

 その足並みで先ほど出てきた場所に到着する。

 そして、こっちに顔を向けると一言だけ話す。


「こんなところで遊ぶのは良いが、成人するまで村の外出れないからな。破ったら生産の神の呪いが掛かるから気をつけろよ。」



 その後、一瞬闇が現れてその中に飲み込まれると消え去った!

 それは、ほんの数秒の出来事。


「え?あれだけ?もっとすごいことがあると思ったのに。」


「…。なんか近所のお節介爺さんをイメージした。」


「注意ドワーフ闇に消える。」


「ぶふ!それ!」


 とりあえず広場に行ってみる。

 予想通り、ハーフドワーフらしき人達が30人程。

 その中で、1人だけ動けない人がいたので事情を聞いてみる。


「え?ランダム選択なんてあったの?テッケンさん知ってる?」


「いや…。儂も知らんのう。」


 結構はっきり表示されてたようなので、第1陣の時は無かったのかもしれない。その人にはポックルのことを話したが、事前に調べて知ってたようだ。次は良い種族になると良いね。


 ふと顔を上げると、3人のハーフドワーフが前にいた。


「あの!『6度の飯と釣りが好き』のブログの人ですか?」


 なんと俺のブログを見てた人だった。

 ほぼ日記みたいになってるから、釣りゲー仲間とか身内しか見ないと思ってた。

 いざ言われると恥ずかしいな。


「それじゃあ、ハッチさんのブログを見てやってきたんだ。」


 テッケンさん素が出てるよ!


「たぶんですけど、ここに来てる人達はほとんどそうだと思いますよ?」


「そうよ。妖精種のブログやってる人ってほとんどいないし、ドワーフ系はハッチさんしかいなかったのよ。」


 話を聞くと1、2陣の当選者のほとんどが若い人で、一番若いハーフドワーフでも制限に引っかかるらしい。俺も引っかかってるんだけどね。

 逆に当選した年上組は、変なのが少ないだろうと、狙ってきた人もいるようだ。


「俺のブログが役に立ったとはなー。なんか不思議。」


「まぁ、ドワーフ仲間が出来たから良かったってことで!」


「そうだね!」


 そこに監督がやってきた。


「む。新人どもが何人もいるな。勝手に鉱山行くなよ?お前は今日はどうする?」


「今日はこれを直すんで。」


 そう言って靴を見せる。


「なるほど、ドワ活するなら声をかけろ。」


 そう言って離れて行った。

 鉱山に行くたびに『ドワ活』と言ってたせいか、その単語を覚えたみたい。


 そこで、左上のほうがピコピコ点滅してることに気づく。


「なんだこれ?」


《LIVE配信時間がもうすぐ30分を超えます。》


「え?LIVE配信?」


「あ、ハッチさんも配信してたんですか?僕もです。」


「録画って言ってなかったか?とりあえず、止めるか続けるか。」


 そう言われて停止アイコンを押す。


「まさか、配信してると思わなかった。テッケンさん、ごめん。」


「別に良いよ?さて、お…儂は外に行くかの。」


 そういうのも配信されてたんだよ?




 3人とフレンド登録して、解散となった。

 さて、この靴直さないと仕事出来ないからな。

 早く靴屋に行こう。

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