第9話 木工修練

 採掘がはかどって、ノミと小刀も予備まで出来た。


「まさかクエスト報酬が【金やすり】とはな。」


 試しに作れるか聞いてみたら。「もっと器用になってから出直してこい!」と言われてしまった。

 何のスキルが必要か言わないが、道筋を示してくれるので、こういうところは親切なんだよね。

 一度教わってない形のナイフを作ってみると、見事に失敗し、「もっと上手くならないと教えらんないな。」と言われた。





 今日はアルデンさんに木工を教えてもらう日。


「よろしくお願いします!」


「うん。今日は作ってもらったナイフの柄を作る練習かな。」


 事前に、ナイフを3本作ってきてくれと言われている。

【くず鉄の劣化ナイフ(2)】【くず鉄の劣化ナイフ−】

 これらを取り出すと、アルデンさんが粗悪な方を持ち上げた。


「今日の報酬はこれで良いよ。」


「良い方じゃなくてですか?」


「本当は貰わないつもりだったんだけど、ドーインさんに受け取れって言われてね。」


 俺としてはどっちでも良いんだが、こういう話をしていると、普通に人と会話してるように感じる。


 木工はスキルすら生えてないので、まったく削れない。

 そう、削れない!

 小刀の握り方を教えてもらって、木に当ててみるんだけど、表面を滑ってしまう。なんとか、削れたとしても途中で引っかかったり、それが外れて指を切ったりしている。出血のデバフ時は、本当に流血していた。

 鍛冶の時にも火傷をしたけど、かなりリアルだ。その時ヘルプの吹き出しで、設定からフィルターをかけられるとわかった。モンスター等の解体時もフィルターがかかるので、俺はノーセンキュー。魚捌いて食いたいんだよ。


「やっちゃったねー。ほら、薬草と包帯。これ巻いておきな。」


 やり方がわからず首を傾げていると、アルゲンさんがやってくれた。

 薬草を揉んで傷に当て、その上から包帯を巻くと。減っていたHPゲージが止まった。さらに十秒後に微量ずつ回復していく。

 これって戦闘中無理じゃね?




 傷を負いつつ、2時間がんばって出来たのがこれだ!


【木を削った物体−】


「最初はこんなものだよ。毎日削ってると、だんだん出来るようになるから、がんばってね。」


 渡された片腕サイズの角材を持って帰り、シコシコ削る日々。

 次アルデンさんに教えてもらうのは1週間後なので、それまでに木工スキルだけでも生やしておきたいな。





 3日くらい削ってると、かなり木屑が溜まってきた。


「そいつは結構便利でな。焚き火の着火時に使えるぞ。」


 今日も『親方TIPs』が出てきた。

 弟子になってなかったら全然わからないよ。


 今度『親方TIPs』まとめメモを書いておくかな。



 アイテムの説明も無いから、知ってる人に聞くか、使って確かめるしか無い。

 ヘルプにも書いてないし、ゲーム内情報ってキャラに聞くか、外部の掲示板しかないんだよな。

 他のプレイヤーたちもどこかで教えて貰っているんだろう?


 やっぱり掲示板かな?

 掲示板とか、釣りしか見てないからわからないんだよね。

 ネテラの釣り板は出来てたけど、予想通り道具はまだ売ってなかった。

 魚人村にも無かったから、作れってことだよな?







 次の木工授業日はマイナス無しのナイフを渡せた。

 粗悪を持ってこなかっただけなんだがな!


「お!ちゃんと削れてるね。じゃあ次はノミも使ってみよう。」


 墨でナイフの柄部分を書き、そこを慎重に削っていく。

 ゴリゴリ削る。

 やっぱり詰まる時もあるが、木に慣れたのか、小刀の時よりはマシだな。


「ふふ。これなら前回よりマシなのが出来るな。あっ。」


 気の緩みからスッポ抜けたノミが木を挟んでいた足へ…。


「ぎゃああああ!あし。あし!」


「大丈夫。靴履いててよかったね。」



 良く見てみると、革靴で止まっていた。

 あぶねー。

 手の傷も、包帯して5分はバッドステータス消えなかったからな。

 歩けないとかなったら面倒だ。

 だけど革靴かぁ。

 祝い品だったから、ちょっと申し訳なく思う。


「その革靴ダメになっちゃったね。直して貰ったほうがいいよ。」


「そういえば、これってどこの店のだろう?」


 親方に貰ったから、場所も知らないんだよな。

 帰ったら聞いてみよう。


 ほとんど終わりかけだったから、最後までやってみる。

【木を削った置物−】


 物体からは卒業できたか。

 しかし、先は遠い。


 雑貨屋に戻ると、革靴のことを伝えて謝った。


「お前不器用だからな。俺の贈り物が役立ったな!」


 全く気にした素振りもなく、むしろ嬉しそうにしている。

 靴屋の場所も教えてもらったので、明日行ってみよう。



 そういえば、第2陣が来るのも明日だっけ。

 ある程度情報は出てるから、初日みたいなカオスにならないと思うけど。

 ドワーフ人口も増えてくれると良いな。


 今この村の知ってるプレイヤーは2人だけなんだ…。

 靴屋の途中に広場があったな。

 行きがけに覗いてみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る