第5話 鍛治修練1

 今、俺は村の端にある鉱山で採掘をしている。


「くっそー!採掘だけでもハードモードかよ!」


「新入り!うっせーぞ!」


「うーっす。」


 ツルハシを振るうたびに飛び散る石片。

 顔にぽこぽこ当たって時折HPゲージが減少している。

 時間経過で戻るが、気になってしょうがない。

 対策はゴーグルを購入すること。

 そして俺は無一文!



 時を遡ること2時間前。

 アルデンさんの店から戻ったところ。




 ◆ ◆ ◆




「ちゃんと渡せたか!?」


「はい!」


「よし!今のうちに顔を売っておけ!次は鍛冶に入るぞ!」


「待ってましたー!」


「うむ。じゃあ鉱山行け。」


「え?」


「え?じゃねぇ!練習する鉱石くらいとってきやがれー!」


「はいーー!」


 店から蹴り飛ばされて、外に出るが、鉱山てどこにあるのさ。

 そしてHPゲージが2/3まで減っている。

 そのうち親方にPKされるかもしれないな。


 止まっていても始まらないので、また人に聞いて回るか。

 ちょうど前を歩いていたドワーフがいたので聞いてみる。


「すみません。鉱山ってどこにありますか?」


「鉱山?お前成人前じゃねーか。外は行けねえぞ?」


 なんと、鉱山は外にあるらしい。

 早くも難関が待っていたが、事情を説明すると、すんなりと解決。


「鍛冶修行か。それなら監督付きでいけるぞ。ドーインさんなら良いだろう。ついてこい。」


 ツルハシを構えて、足早に歩くドワーフ。

 その後ろをついてくと、門の外まで行けた。


《未成年の外出は、監督者から一定の距離を離れるとステータスペナルティがあります。》


 どこまでも厳しいアナウンス。


「ここが、鉱山だ。結構近いだろ?」


 歩くこと5分で到着。

 こんな近場に行くのに監督付きなのか…。


「未成年は1階層しか入れないからな。もっと良いのが欲しけりゃ成人してからだ。」


「よし!早速掘るぞ!このゲーム初のドワ活だな。」


 念願のツルハシ1打目:クリティカルヒット!

 洞窟に反響する良い響き!

《採掘+が0.2上昇》

 続きの2打目:石片が当たりました。

 3打目:石片が当たりました。

《耐久が0.1上昇》

 4:石片が

 5:石片

《耐久が0.1上昇》

《採掘+が0.1上昇》


「すんませーん。石片が痛いんですけど…。」


「ん?そりゃ。ゴーグルしねえと痛いわな。次来る時は買ってこいよ。」


「金あったっけ。ストレージはこれか。」


 _______________

 所持金:0ゴールド

【木のトンカチ】【歪な雑巾】【ザリガニ】【石のカケラ(9)】【廃棄物】【くず鉄の劣化インゴット−】


 _______________



「見事に何も無い。廃棄物に至っては使い道が思いつかないし、下手に捨てても良いのか…。」


 監督に聞いてみると一応廃棄物にも使い道はある。

 敵に投げつけると一定確率で混乱状態にできるらしい。


「投げるってもなぁ。」


 石のカケラを1つ投げてみると、明後日の方向へ。

 もう1つ投げる。

 跳ね返って自分へ当たったぞ!

《投擲が0.1上昇》

《耐久が0.1上昇》


 お金貯まるまでは、休憩しつつ集めるしか無いか。



 結局掘れたのは【石のカケラ(45)】【劣化銅鉱石−(5)】【劣化鉄鉱石−】【砂利(15)】【砂(23)】


「これでインゴット作れます?」


「無理だな。ってか下手くそだな。掘ってる場所も良くねえぞ。」


 そう言って監督が説明してくれる。

 俺が掘ったところは、色合いが悪いらしい。

 監督が指したところは、光っていて鉱石が詰まっている。

 らしい。

 見てもわからんぞ?

《鉱物探知が0.1上昇》


「え?鉱物探知?」


「お。そのスキルがわかったか。じゃあそれも鍛えないとな。」


 再び掘り始めると、監督が言った場所だと鉱石が多めに出た。

 ただし全て劣化−。

 これは俺のスキルの問題だな。

 今思うと、このまま放り出されていたら、かなりの鬼畜モードだったんじゃないか?


「とりあえず、今日はここまでかな…。」


「終わりか?じゃあ戻るか。」


 なんだかんだで、色々教えてくれたりと監督は優しかった。


 店に戻ると今日は仕事終わりで、ドーイン親方は酒を飲みに出かけている。

 店番してる奥さんから晩飯をご馳走になり、屋根裏で就寝。

 ちなみに奥さんの名前はリリーさん。

 裁縫が得意で、空いた時間に編み物してるらしい。

 糸術あるし、教えてもらっても良いな。


 思いもよらず、生産寄りになってしまった。

 村から出れないし、仕方ないか。


「ログアウト!」




「ふぃー。結構疲れたな。リンクステージも電源落としてっと。」


 浮遊感が無くなり、地面に着地。

 アランから着信が来てるな。


「アランか?すまん。今までやってた。」


「望太も始めてたか。どんな種族にした?」


 ハーフドワーフにしたことを伝えたら、知らなかったみたいだ。細かく探さないと見つけられなかったしな。アランはリーパットっていう種族にしたらしい。人間の半分サイズでって、ポックルと似てるな。そのうち情報も出てくるだろう。

 アランの名前も昔から使ってた『うなぎ』にしていた。



「そうそう。だからあと2ヶ月は村の中だよ。」


「こっちもスキル上げ無いと厳しいから、似たようなもんだよ。」


「じゃあ、合流はしばらく先だな。」


「とりあえず、次ログインしたらフレンド送ってみるね。」


 ピッピッピッピとタイマーが鳴った。

【水槽の水換え準備】


 忘れるところだった。

 ビーシュリンプの水換えしなきゃ。

 水質はOKと、あとはセットして…。

 あとは自動でやってくれる。



 今日やったことをブログに書いておく。


「ドワーフ村は死屍累々。ハーフドワーフはハードモードなりと。」


「明日もドワ活がんばるかー。」

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