第6話 鍛冶修練2

 朝起きると爽快感と共に、体に独特の痛みが走る。


「うぉぉぉ!MR特有のやりすぎ筋肉痛きたー。だが、この程度ならやれる。」



 ガッチガチの筋肉をマッサージ。

 入念なストレッチも行って、いざログイン!

 の前にやっておくことがある。



「本日も良い日でありますように…。今日こそ鍛冶の修練に入りたいです。お願いしますお願いします!」


 俺の秘技『海老反り祈り』は、3ヶ月も釣れなかった黒メダカを釣った実績がある。

 そもそも、30%の確率で釣れるはずの黒メダカだけ釣れないとか、呪いに近い。やはり神様の力は偉大なのだ。

 これで、えびす様が見ていたら、鉱石獲得率10%アップは間違い無いだろう。

 見てなかったら知らない。


「ログイン!」





「屋根裏スタート。時間は朝か。」


「とりあえずフレンド欄開いて『うなぎ』。そっか外国だから国名変えないとな。イギリスで。あった申請。よし。」


 階段を降りてくと、2人共いた。


「おはようございます。親方、今日は…。」


「鉱山いってこーい。」


「ドワ活行ってきまーっす。」


 ツルハシ担いで、監督の元へ。


「今日もおなしゃす!」


「待て、ゴーグルは買わないのか?」


「金ないっす!」


 初めて監督のへにょ顔を見たな。

 ポケットをゴソゴソすると、くったくたのゴーグルを取り出した。


「旅に出た奴が使ってたのだ。貸してやる。無いよりマシだろ。臭えから気をつけろよ。」


「あざーっす!やったな。」


 ちょっと汚れてるが、これでダメージ軽減だ。

 装着!


「うっへ。くっせ!」


《臭気耐性が0,1上昇》


「監督!これヤバいです!」


「臭えって言ったろ。村一番の風呂嫌いが使ってた。…早く金貯めろ。」


「はい…。」


 これは早く自分用を買わないと、大変なことになるぞ。





「じゃあ、掘ってきまーす!」


 昨日教わった通り、目をこらして見るが、まるっきりわからん。

 それらしい所を掘ってみるか。

《臭気耐性が0.1上昇》

《臭気耐性が0.1上昇》

 ダメージは無いが、鼻へのコラテラルダメージが酷い。


「こうやって掘ってると、ドワーフって感じがするな。ドワ活!」

《採掘+が0.1上昇》

《採掘+が1になりました。》


「お!やっと1か。ちょっと掘りやすくなった?」


 気持ち楽になったか?

 良くわからないな。


 掘り掘り掘り。


 昼まで続けた収穫がこれだ。

【砂(29)】【砂利(22)】【石のカケラ(54)】【劣化銅鉱石(2)】【劣化銅鉱石−(7)】【劣化鉄鉱石(2)】【劣化鉄鉱石−(5)】


 ここで問題が起きた。


「お、重い…。」


「重量制限だな。荷物積みすぎだ。売るか置いてこないと無理だ。」


 そう言われて、監督と村に戻ってきた。

 監督に教えてもらって買取店に来たが、二束三文。

 砂と砂利と石のカケラを全部売って20ゴールド。


 パン1個が20ゴールド。

 ポーション1個が50ゴールド。


 劣化鉱石達も1個3ゴールドだったので、売るのは止めておいた。

 ちなみに、【臭いゴーグル】と【廃棄物】は買取不可だ。


 鉱石も集まったから、一度親方のところに戻ることにした。


「戻りましたー。このくらいでどうでしょう?」


 そう言って鉱石を見せる。


「クズ鉱石だな。まぁインゴット2個分にはなるか。」


 案内された店の外には、溶鉱炉があった。

 一度やり方を見せてくれるという。


「このバケツに入れて溶かすんだ。溶けた奴をこの型に流し込んで、冷やして固めたら完成。色に注意しろよ。鉱石ごとに違うから、成功したのを覚えるんだ。」


《鍛冶+が0.1上昇》


 説明でもスキル上がるんだな。

 綺麗なオレンジ色で取り出したように見える。

 やってみるか。


「バケツに入れて…。炉に入れて。あっつ!」


《熱耐性が0.1上昇》


 リアルにしたいのはわかるが、もうちょっと難易度下げられなかったのか?


《熱耐性が0.1上昇》

《熱耐性が0.1上昇》


「いまだ!これを流し込む。」


《鍛冶+が0,2上昇》


【くず鉄の劣化インゴット−】が完成した。


 続けてやったら、次は【廃棄物】ができた。


「売れねえが練習にはなるだろう。最初はそんなもんだ。貸してみろ。」


 親方がインゴットを叩いていくと、何かが飛び散って鉄が光っていく。炉に入れて出したら叩く、何回か繰り返すと【くず鉄のインゴット】が出来た。


「こうやって、純度を上げていくんだが、そうすると小さくなる。」


 確かに2/3サイズになっている。


「ここまで出来たら見習いだな。」


「え?じゃあ俺は?」


「小間使い。」


 見習いですら無かったのか。


「これでナイフ作ってみろ。」


 そう言って渡すと、親方が別のインゴットで見せてくれる。

 先程と同じように、熱して叩く。

 繰り返し。

 ある程度薄くなったら、形を整えて、最後に研ぎ。

 見せてもらうと【ナイフ】となっていた。


「熱して、叩いて…。あっつ!」


 薄くなったか?


「整えて。冷えたら研ぐ。」


【劣化ナイフ−(鈍器)】


「なんでだよ!」


「お前。」


「親方。」


「センスねーな!がははは!」


 親方が俺からひったくると研ぎ直した。

【劣化ナイフ−】


「おぉ!」


「研ぎも叩きも全部足りない。力も速さもネェから倍はやらんとな。」


「なるほど。」


 もっと見て覚えろ的な感じかと思ったが、優しい親方でよかった!








「ログアウト。」




「さて、今日も日記を書くか。」


「監督の貸すゴーグルは臭いっと。」


「なんとか、鍛冶までたどり着けたな。さすが海老反り祈りの効果は大きい。」

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