第3話 チュートリアル

《これよりチュートリアルを開始します。》



 じわじわと辺りを光が覆い始めると、草原マップに切り替わっていく。

 そこに1人現れた。中性的で性別はわからないが、いわゆる美形さんだな。


「ここからは専用AIがナビゲーションします。JP−101です。よろしくお願いします。」


「あぁ。こちらこそよろしくお願いします。」



 ステータスだが、ほとんどマスクデータになっていた。

 HP、MP、SPは他のゲームと同じだが、細かい数値は見れず、確認したい場合は専用スキルが必要になる。しかも、そのスキルでも大凡おおよそまでしかわからないらしい。もちろん力、素早さ等の数値も同じ。

 各ステータスの上昇判定はプレイヤーの行動に依存し、特定のクエストを完了させることでも、上昇させることができる。


 次にスキルのつけ方や外し方、スキル経験値について教わった。

 つけ外しは基本的にセーフティゾーンで行うことができ、それ以外で変えたい時は、課金アイテムか、特殊なスキルを使用することで交換できるようだ。

 スキル経験値は、上昇値の最低が0.1単位となっていて、100まで上がるとスキルレベルが上昇する。スキルごとにレベルの最大値は異なるが、進化するスキルとしないスキルもある。更にストーリーを進めると、スキルの融合も開放されていくみたいだ。


 正直、今説明されても、覚えてられそうにない。

 そう思ってると、進化可能時や融合可能時に、説明してくれるとわかった。


 ちなみにスキル最大レベルもマスクデータだ。

 プレイして覚えろってことだな。



「次は、実際にスキルを使用してみましょう。」


『採掘+』『釣り』『糸術』『鍛冶+』の生産スキルから試すことになる。


「え?糸術って攻撃スキルじゃないの?」


「『糸術』は、糸を使用した全ての行動に上方修正をかける効果があります。具体例をあげると、裁縫の成功率上昇等です。正確には補助スキルにあたりますが、生産も可能なのでこちらに入れました。」


「しくったな。後で攻撃スキル取らないといけないか。」


 採掘はツルハシで掘る動きをしたが、結構疲れる。しかも取れたのは【石のカケラ】。

 釣りでは1匹釣り上げるまで、餌を10個取られ【ザリガニ】が釣れた。

 糸術があるので、裁縫スキルが無くても、一応作れるらしい。見事に【歪な雑巾】が出来上がった。

 最後の鍛冶は、ひたすら金属が溶けるのを待ち、型へ流し込む。失敗。

 失敗失敗失敗。

 《鍛冶が0.1上昇》

 【廃棄物】

 《鍛冶が0.1上昇》


「ちょっとハード過ぎませんかねぇ!!?」


 さすがに黙ってられずに、声をかけるとニヤニヤしている。


「いつまでやってるのかと思いまして。ふふ。」


 ダメな奴に当たってしもうた。


「チェンジで。」


「受け付けていません。さぁ、続きをしましょう!」


「うへぇ。」


 綺麗なオレンジ色になったところで流し込む。

 …どうだ?

 よし!ギリギリ成功か。


【くず鉄の劣化インゴット−】


 ハードモードかよ。


「お分かり頂けたかと思いますが、スキル値が0の場合。100%失敗します。上昇するにつれて、成功確率も上昇します。また、適正な方法で行うことでも、成功確率が上昇します。」


 そう言うことは、やる前に説明するんじゃないのか?


 次に、戦闘だ。


「戦闘スキル無しでも、武器の使用は可能です。こちらも一定値経験を積むことで、スキルを獲得できます。」


 俺が手にしているのは木のトンカチ。

 鍛冶で使わずに装備していた物を持っている。

 軽く素振りしてみるが、良くわからないな。


「初期スポーン地点のモンスターを出します。」


 クソAIが指した所を見ると、片腕サイズのトカゲが出てきた。


「ドワーフ村の近くに出る、レッサーリザードです。戦闘を始めてください。」


 これまで溜まった鬱憤を晴らすところだ。


「死にさらぁせぇぇぇぇぇ!!!」


 スカ


「うおらぁぁぁ!」


 スカ


 当たらねえ。


「あれ?あんな難しい奴だっけな。」


「そりゃどういうことだよ!ぶへぇ。」


 《耐久が0.1上昇》


 AIに文句言ってる間に衝撃が来る。


「ちょ。よそ見すら出来ない。」


 しばらく俺が必死に戦っていると電子音声のアナウンス。


 《耐久が0.1上昇》

 《回避が0.1上昇》


「ま、まだか!?」


「問い合わせしてるから待ってねー。」



 《耐久が0.1上昇》

 《耐久が0.1上昇》

 《回避が0.1上昇》

 《自然回復が0.1上昇》


「ま、まだでふか。」


「わかった!君、年齢制限以下で始めたでしょ。ステータスに−補正がかかってるよ。それだとレッサーリザードじゃ無理か。」


 そう言って、俺の前のモンスターが消えた。


 良かった。

 痛みってほどじゃないんだが、ちょっと視界が悪いな。


「おへのかほ。どうなっへる?」


「はい。」


 鏡が前に現れると、ボッコボコ。


「ちょうど良いから回復行程に移ろう。このポーションを飲んで。」


 渡されたポーションを口に含むと、香りの強い青汁に海藻のフレーバー。後味に甜茶てんちゃを感じる。


「うお!…こいつは結構くるな。」


「おめでとう!日本だと君が始めて噴き出さずに飲めたよ。」


 《称号:『ポーションドリンカー』を獲得》

 《称号:『初称号獲得者』を獲得》


「なんか知らないけど、称号もらった。」


「称号は後で説明するから、先に戦闘しようか。こんどは魔物じゃなくて動物ね。」


 ドブネズミが現れた。


「今度こそ!やぁ!」


 …


「えい!」


 ……


「ぜぇぜぇ。やったか…。」


「おめでとう!戦闘はこれでクリアだね。」


「やった。」


「最後に補助スキルと言語スキルの説明に移ります。」


 補助スキルは、さっきの『糸術』みたいなものから、視力を強化するものまで様々だ。ステータス向上系から戦闘や生産スキルの効果を上昇させたりする。


 言語スキルは、その地域の言語を話したり、読み書き出来るようになるスキルだ。

 俺がとった精霊語は、エルフ、ドワーフ、ポックル等の妖精種が使う。ポックル族は人族の半分サイズ、酒好きで陽気な種族だ。他にも妖精種はいるみたいなので、どこかのストーリーで出てくるかもしれない。

 機械言語は、シークレットになっていた。これも進行度合いで出てくるのかもしれない。しかし、そんなの最初に貰ってもなぁ…。



 クリア報酬【初心者セット】を得ました。


「初心者セットは、初心者用の装備が封入されています。開封後に装備してください。」



 言われた通り装備してみる。


 _______________


 名前:ハッチ

 種族:ハーフドワーフ(未成年)

 職業:なし


 頭:なし

 胴:布の服

 腕:なし

 腰:布の短パン

 足:草鞋


 武器:木のトンカチ



 <戦闘スキル>

 なし

 <魔法スキル>

 なし

 <生産スキル>

『採掘+:LV0』『釣り:LV0』『鍛冶+:LV0』

 <補助スキル>

『糸術:LV0』

 <言語スキル>

『精霊言語:LV1』『機械言語:LV1』

 _______________


 せめて長ズボンにして欲しかった。



「先程の称号は、特定の効果を増加・減少させる効果があります。詳細は称号欄を確認ください。」



「これでチュートリアルは終了です。これから初期地点へ送ります。GOOD LUCK。」


 やっと終わった。

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