第51話

「おぎゃあ」




目の前に、紅い目の赤ん坊が居る。




「おぎゃあ」




紅い目の赤ん坊が、手を伸ばして来る。




「おぎゃあ」




上げられ無かった産声を真似て




「おぎゃあ」




望まれた数少ない産声を上げて




「おぎゃあ」




叶わなかった赤ん坊達の産声を上げて




「おぎゃあ」




紅い目の死産した赤ん坊が、其処に、居る。




手が頬に触れ、髪に触れ、身動きの取れぬ人形を…きゅっ…と抱き締めた。


ひんやりとした身体はゆっくりと融ける様に角砂糖が水に溶けて崩れる様に、崩れて逝く。




「おぎゃあ」




其れは、とても淋しい声で。




「おぎゃあ」




其れは、とても優しい声で。




「おぎゃあ」




其れは、とても懐かしい声で。




赤ん坊は




消えて




逝った。

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