第49話

唇に掛けられた指で、一気に下顎を引き剥がされる。


開いた口の中に手を突っ込まれる。


何十ももの、何百ももの手が


手が


手が


手が


手が


口に入ってくる。


我先にと言わんばかりに、押し退けんばかりに、人形でしかない此の身の口腔内に胎内に、


手を、


頭を、


身体を、


押し込んで来る。


何十ももの何百ももの赤ん坊の。


赤ん坊の。


赤ん坊の。


赤ん坊の。


赤ん坊の。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


赤ん坊。


其れは、永遠に続くかと思われた。


空間を埋め尽くしていた赤ん坊。


それが、次々と秩序も無く押し寄せ、手を手を伸ばし、胎内に入り込み潜り込み。


赤ん坊の濁流。


其れは永遠に留まる事を知らぬ様に思えた。


何時間も何日も何年も何百年も、続いたかと思えたずるずるずるずると胎内に這入り込まれ潜り込まれ続ける時間。


が。


突如、終わった。




最後の一人、紅い目の赤ん坊が、目の前に、居た。




目の前で、対峙して居た。




「おぎゃあ」




紅い目の赤ん坊が、口を開く。

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