第43話

ぞろり。




何か黒い物が扉から滲んで見えた。昏黒の様な不安になる闇色に、胸騒ぎがする。


否、胸の中身は人形故に無いので騒ぎ様が無いのだが。




「さ、行こうか」




ネイサン青年が爽やかに云う。


眼鏡ニイサンも飄々と頷いた。


……てか、辞めません……? 辞めた方が良くありませんか? ほら、此れ、良く考えたら不法侵入ですし、思い切り犯罪者ですし、海外で警察のご厄介に成ったら大変そうですし下手したら御近所の屈強な男達に囲まれてケチョンケチョンのコテンコテンのメッタメタにされて海に沈められてしまう事だって有り得ないとは……。




訴え掛ける此方にはお構い無しに、扉の中に足を進める二人。


闇が、二人が立って居る空間だけ、ぽかりと開く。


一歩進む毎に、その部分だけ、光が差して見れる。


勿論、灯りを持参しては居るのだが、通常にしたってこの闇の深さは妙過ぎる。


2m先が後ろが、見えないのだ。


完全に建物内に入り、扉が閉まった時、水の様な「とぷん……」と云う音が聞こえた気がして、闇に包まれた。


て何故閉めるのですか!! 開けておきましょうよ!!! 逃げるのに不便じゃないですか!!




「はは、閉めたんじゃ無くて、閉 ま っ た んだよ」




眼鏡ニイサンが笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る