第41話

街中を、眼鏡の或る種危ういニイサン兄さんがフラフラと彼方此方へ人形を置いてみてはカメラを構える。


隣のネイサン青年の顔には「僕は可哀相な兄の付き添いです」とでも書いてあるかの様だ。


時偶、カフェの店員の様な人種が眼鏡ニイサンに声を掛けるも、ネイサン青年を見ると肩を竦めて直ぐに立ち去る。


日本ならネイサン青年の方がそう云う方々におもてになりそうなものだが、やはり、感覚の違いと云う物だろう。ネイサン青年には全くお声も掛からず、更に云えば犬猫すら寄って来ない。


散歩中の大きな金色の犬に匂いを嗅がれ乍、違和感を覚える。


犬が、眼鏡兄さん含む他の人間には尻尾を振って愛嬌を撒いているのに、ネイサン青年を無視する様に、否、見えて居ないかの様に振舞う。


犬が、顔面を舐めて来る。


慌てて引き剥がす飼い主と眼鏡兄さん。


まぁ、ちょっと大量の涎の付着が見られるが、洗えば取れるだろう。


幸い此の身は人形なので、匂いも判らない。




「僕ね、動物に嫌われるから」




無言で居たのは喋れない振りをしているからなのだが、何やら言い訳の様にネイサン青年が言う。




「嫌われる分には全然構わないんだけど、暴れたり襲って来たりする奴が偶に居るからねぇ。面倒事を起こさない様にこれでも気を使ってるんだよ」




ネイサン青年が、爽やかに笑った。

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