第39話
とあるヨーロッパのとある街。
田舎町ではなく、様々な人種の行き交うやや大き目の街。
ピンクの熊を抱き締めた長身痩せ型眼鏡の東洋人の男と童顔の爽やかな青年が連れ立って歩いてもあまり悪目立ちしない程度には大きい街。
無関心とは優しさでも或るのだろう。
存在を許さない過干渉では無く、存在を許す無関心。
それは眼鏡ニイサンの様な人間にとっては心地良い冷たさなのであろう。
まぁ、それを当の本人が気にするかと問われれば、気にしないのだろうが。
「メイベル、苦しかったねぇ」
ピンクの熊の頭をフードのように外し、頭を出させると、やっと外の情景が見れた。
ちなみに、首から下は熊のまま。ノーパン気ぐるみである。
辛うじて顔には手の痕が最初の一つだけしか無いので、そう刳い事には成っては居ないだろう。
実際に此方を見る人は居ても「そう云う物」としか認識していない感じを受ける。
無闇矢鱈に周囲に衝撃を与える存在では無いと云う事だ。
足元はお洒落な石畳。信号機や看板も古い物と新しい物が混在し、調和が取れていた。
遠くに城か何かが見え、手前には猫がのんびりとカフェの客におねだりをしている。
ネイサン青年が店内から何やら持って出てきた。
「オープンテラスで軽く食事にしよう」
何やらカフェのオープンテラスの椅子に座らされ、眼鏡ニイサンが鞄から高そうなカメラを取り出す。
コーヒーミルクをねだりに寄って来た猫とツーショットを撮られた。
ガッシャガッシャとあらゆる角度から写真を撮る眼鏡ニイサンに店員が何やら話し掛け、流暢な外国語で返事を返す。
……何語だ……?
「兄さん、何ヶ国語か喋れるんだよ。暇だから覚えたんだって」
……暇だから……?
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