第37話
要するに、夢の中のそいつが主導権を乗っ取ろうとしているんじゃね? と釘バットネイサンは言う。
「でも、元々の持ち主の権利の方が強いから、中々上手くいかない。俺みたいに」
出来上がった釘バットを丁寧に布に包むと、バッグにしまい、押し入れに片付けた。
「みんな仲良くすれば良いのにねぇ」
「メーベルがその悪霊に乗っ取られたら、兄ちゃん、怖がって泣いちゃうだろ」
「そんな怖いのか、イヤだなぁ。メイベルはこんなに可愛いのにねぇ」
眼鏡ニイサンの膝に乗せられ、両腕を持たれてパタパタ上下させられる。
「お前……されるがままなのな……」
笑いを堪える釘バット青年に、そういえばあの出会った時の禿げ全裸を爆笑してくださったのは此方の彼なのかと腑に落ちる。
……臓腑は無いのだが……
しかし喋り方はバール青年だった気がする。否、声が二種類同時に出ていた様な気がしないでも無い。
構造上無理であろうと思いを巡らせ、一つの結論に辿り着いた。
「……腹話術……」
「確かに、今の状態は腹話術師とその人形にしか見えないけどね」
いつの間にやら雰囲気が変化している。
これは、バール青年の方か。
「何? 腹話術師ごっこなの? それなら確かに他の人に見られても平気だろうけど。兄さんが変人扱いされるだけだし。まぁ、兄さんが引き篭もりを辞める良い機会にもなるよね。ヤギリンと一緒なら、外に出ても怖くないんじゃない?」
ぱぁぁっ。と眼鏡ニイサンの表情が明るくなった。気がした。
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