第35話

呪いの悪霊人形。




此の言葉に如何程の意味を篭められているのか。




呪いとは、恨み辛み嫉み妬み憎しみ哀しみが根底にあり、人が人に対して行う物では無いだろうか?


人。人で在った物。否、動物や神と呼ばれる存在にも其れは有りえる話だろう。


が、主にやはり、現在人であるか、嘗て人で在ったモノあと考えるのが一般的ではないだろうか。




悪霊。文字通り悪い霊、災禍を齎す邪悪な霊的存在なのだろう。自分が今迄に何か災厄を引き起こした事が有るだろうか? 否。無い。覚えて居る限り無い。此れはきっぱりと言える。


覚えて居る限り、無い。




人形。人の形をした物。ヒトガタ。容れ物。身代わり。形代。依り代。




恐らくは、恐らくは自分は、自分は中に容るモノなのだろう。


誰か意識の固まりか浮遊霊か、自己分析するに、そう云う「嘗て何かで在ったモノ」なのだろう。


人の信仰や恐怖や噂話や妄想が具体性を増すに従って、其の存在が確固たるモノになる成り立ちを持つ神話や怪談が真実に成る。そんな存在も在ると言うのなら、なんとなく「放置された人形、気味が悪い」で存在する様になる呪いの悪霊人形も居るのではなかろうか?


寧ろ、ネイサン青年の繰り返されるその言霊に因って自分は成り立って居るのではないかと思い始めてしまう位には。

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