第33話
大体さぁ……、とネイサン青年が言う。
「大体、この家に居てそんな事になる方がおかしいんだよ」
眼鏡ニイサンの力の影響下で心霊現象が起きて居るのなら其れは
「其れ、夢って事でしょう?」
言葉少なにネイサン青年が言うが、理解出来る。
夢とは、記憶。体験したこと、目にしたものが断片的に表れ、そこに想像や空想が取り込まれ作り上げられる物。
ならば、“誰”の体験した事だと云うのか。
外部の悪意の及ばない結界内に“誰”の意識が入り込んだと言うのか……。
自分自身の、だろうか?
人形になる前の、其の記憶の一部だとでも云うのか。
しかし、明らかに「何者か」の目線では無かった夢の構造に、まるで画面の中の出来事を観賞しているか様な其の感覚であった夢に、自分の体験だとはとてもではないが思えない。
それに、「人形は夢を見るのか?」と言う大問題も残っている。
「だから、ヤギリン。君、忘れているかも知れないけれど、呪いの悪霊人形だからね?」
其の言葉に、そう云えばと思い出す。
否定と反論を繰り返しても、「呪いの悪霊人形」と繰り返すのは何故なのか? ネイサン青年のその言葉の意味は、真意は何だと言うのか?
悪霊は、悪霊と成ってしまった彼等は、一体何処へ消えたと言うのか?
炎に浄化され、転生か天国か地獄かそんな場所へ逝ったのでは無かったとしたら?
何故、自分だけか無事にあの焼却炉から這い出る事が叶ったのか。
あの溶けてくっ付いていた諸々の先輩方は如何成ったのか。
「だから、君、呪いの悪霊人形でしょう?」
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