第30話

「……」




無言でネイサン青年が見てくる。




「……」




無言で見返した。




「…………メイベルの目はどうしてそんなにヤギリンなの?」




否其れは貴方の兄に聞いて下さい。




「メイベルの髪はどうしてそんなに変なの?」




其れも貴方の兄に聞いて下さい。




「メイベルの鼻はどうしてそんなに上を向いているの?」




其れは聞かないで下さいお願いします。




「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」




ああもう煩い。




「何でそんな鼻にしたの? 可愛いと思ったの? 其れとも昔の流行なの?」




ちょっと実験して見ただけだと言うのに此の言い草である。


と、眼鏡ニイサンがむくりと起き上がって、のそりと此方を見た。




「……あれ? なんか、なんか……不細工になってる」




……今のは言葉の暴力だと思います。幾らなんでも可愛いお人形に対してそんな事言っては行けないと思います。曲がり成りにも女の子の姿をした物にそんな言葉を投げ付けてはいけないと思います。ええ、いけないですとも。例え其れが事実だとしても……事実だと…しても……。




「ちょっと変な顔をしてみただけですとも。直ぐに元に戻ります」




直ぐに。


ええ、直ぐに。


もう直ぐに。


直に。


明日には。


明後日には。


三日後には。


一ヵ月後には。


三ヵ月後には。








ええ。


ええええ。


もうしません。もうしませんとも。


もう、表情を変えて見ようなんてしませんとも。




半年。


半年、完全に元に戻るまで、半年、掛かりました。

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