第29話

眩しい朝日。黄色い太陽。小鳥達のさざめき。爽やかな空気。朝露を含んだ風。


この人形メの目には瞼が出来上がって居りました。




……また……また開けられた。


無理やりあんなとこまであんな事されて……もうお嫁に行けない……


と崩れ泣く振りをするも、眼鏡ニイサンは気付く事無くよく眠っていらっしゃる。


瞼を作って満足したのか、ネイサン青年の暗示が強烈で身体に負担が掛かったのか、徹夜仕事での限界が来たのか。


まぁ全部だろうと大まかに推測する。


しかし、眼鏡ニイサンの力のお陰だろう、記憶にも無い様な強烈な朝の日の光の中、極々当たり前であるかの様に、動けて喋れるのだから。


これはオバケに分類されてない証拠なのだろう。


眼鏡ニイサンの「動ける。喋れる」に制限が掛かっていない為なのだろう。




瞬きをすると白い睫毛がふぁさふぁさ動いて面白い。


目を物理的に閉じると云う出来事が初体験なので、面白がって開けたり閉じたりしていたが、睫毛が動く度に風を感じるのも良い。


其の内、口を開けられる様にもされてしまうんじゃないのかしら?


なんて詮無い事を考えて、眼鏡ニイサンなら遣りかねないと少しうんざりする。


また頭を割られるのは如何にもこうにも。


あ。


そう云えば、燃やされて溶けてた諸先輩方の中に、顔の表情が変えられる先輩が居ましたよ。確かに居ました。


あれ、頑張れば出来るのでは……?


…………


出来た気がして、鏡を見れば。


少しだけ、


鼻が


上を


向いて居た。

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