第25話
「まぁ、そんな訳で、亜爻家当主の弟としては、君みたいな悪霊人形を放置できない訳。しかも兄さんが手を掛けて綺麗にしちゃったからね」
綺麗だなんてそんな。本当の事を。とか茶化したくなるのを我慢する。
まぁ、名前を、家を背負って居るのなら仕方も無い事なのだろうが、こう、自分としても折角小奇麗にして頂いたので--普通か如何かは兎も角--お人形的な本分を果たしたい所なのだが。
「そんな訳で、君、名前は?」
「ふえ?」
思わず聞き返す。
「名前だよ、名前。有るんでしょう? ララベルとかアスベルとかカウベルとかそう云うのが」
何でしょうかそのベル押しは? それと最後のは違うと思います、絶対。
「このわたくしの商品名と云う事でしたら、申し訳有りません。判りかねます。誰にもお教え願えなかった物で」
「違うよ、悪霊の名前、有るんでしょう?」
「申し訳有りません。悪霊さんとはお話した事が無い物で。分かりかねます」
「わかりかねちゃうのかぁ」
ネイサン青年が覗き込んで来る。
「本当に?」
「むしろ教えて頂きたいです」
暫し無言で見つめられ、ネイサンが感心した様子で頷いた。
「僕ね、嘘を吐いてるか如何か判るんだけど。君、嘘吐いて無いねぇ」
そんな特技が有ったとは存じませんで。
「本当に名前無いんだね。不便だし何か適当に付けようか」
適当は辞めましょう。ちょっとは考えましょう。いえ、ちゃんと考えましょう。
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