第24話

兄さんが兄さんで弟が地蔵とは。


恐らく自分が人形で無かったら--せめて猫や犬だったなら--顎が外れる位、口をポカンと開けて居たに違い無い。


二十三代目だから二三の読み替えとは。次の代は如何する心算なのかと少しだけ興味も湧く。




「ちなみに僕はハーフだから、あっちの名前も持っててね。そっちで呼ばれる事の方が多いよ」




あっちの名前も偽名なんでしょうね。ええ、そうでしょうともね。




「向うの祖母が、本名名乗れないんじゃ可哀想だからとありきたりな名前を付けてくれたんだけどね」




何故か、今迄の鉄壁の笑顔が翳った気がした。




「ネイサンて云うんだよね」




兄さんはニイサンで弟はネイサン。




「……それは、それは御婆様の普通の幸せを掴んで欲しいと云う願いの賜物なのでは無いかと御見受けいたしまするるけれども……」




動揺から妙な言葉になる。




「そう。100パーセント善意なんだよねぇ」




苦笑気味に「日本語解らない人だし」と付け加える青年ネイサン。


“僕は”と云う事はニイサン兄さんはハーフでは無いのだろうか?


父母のどちらかが違うのだろうか?


年齢にして十は違いそうな印象を受けるので、其れは無い話では無いのだろう。


込入った話に、つい、同情をしそうになる。


まだ十の兄が赤ん坊の弟を抱え、厳しい修行に耐え、利権争いをする汚い大人達の最中必死で生き抜いて来た様な、そんな情景を思い浮かべ、出無い涙を拭った。


「……お辛かったでしょうね……」




「そうでもないよ? 母さんは美人だし父さんは金持だし両親ラブラブだし」

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