第22話

止めど無く青年の口から溢れ出てく来る愚痴に、仕方無しに黙って頷く事とする。




「あいつはいつも甚振って甚振って息の根を止めないで楽しむわけ。そうして肝心なとこで逃げられたりするんだよね。僕は一思いに急所を突くのが美しいと思うんだよね。あいつはいつも相手の話を良く聞かないでしくじるし、僕みたいに深読みしているわけでもない癖に……」




云々と頷き、聞いて居る限り、行動が極端に違う訳では無く。恐らく、思考と志が違うけれど行動の結果は同じと云う……それは二重人格と云うのだろうか? 別の人格なのだろうか? その時の気分では無いのだろうか? いや本人にしか分からない所では有るだろうが……。




「はぁ……。所であんな所で何をしていたの?」


「人形の本分として、小さなお友達のお友達になろうと思い立ちまして、旅に出ようとして居た所存で御座います」




此処ぞとばかりに出来る限りにこやかに言ってみた。


凄い呆れた顔で見返された。




「君、呪いの悪霊人形だよ? 解ってる?」


「ですから、其れは誤解で御座いますとあれ程申し上げましたでしょう」


「いや、だから」


「ですので! ここは保育園か幼稚園か児童館かそう云う場所にわたくしめを寄付して頂きたく…」


「無理」


「諦めてはなりません! 此処は一つチャレンジ精神を持って」


「君、動いて喋ってるもん。無理」


「何を仰いますか。動いて喋れる様に成ったのは此処一カ月、もっと申しますれば貴方様に燃やされてからで御座いますとも。動かず喋らずの期間の方が余程長う御座います」


「だから。動いて喋れるようになった物はもう元のただのゴミ人形に戻れないの。だから無理」


「我慢します!」


「駄目。こんなの放流したら僕の名折れになるよ。これでも除霊師としてそこそこ名が売れてるんだから」


「それは存じ上げませんで申しわけありません。お名前を伺っても宜しいでしょうか?」


「何で知らないんだよ」


「わたくし、除霊師界隈には疎く、安部晴明くらいしか存じ上げません」


「あれは除霊師じゃなくて……まぁいいや」

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