第21話
「……」
無言で見下ろして来る青年。
無言で見返す。
無造作に掴み上げると、そのまま部屋から連れ出された。
廊下を通り、別の部屋へと連れ込まれる。
「あのさぁ」
青年は、自分をぽいと長椅子に放り、隣に座ると口を開いた。
「ここ一カ月で解ってると思うけど、僕、二重人格なんだよね」
唐突な発言に……理解出来ない言葉が幾つか存在した。
日本語でお願いしたい所だが、否、日本語なのに理解できないとはおかしいではないか。おかしくはないか? なんだこの齟齬は?
放られた儘の体勢をおずおずと座り直し、右手を挙げる。
「すみません、何を言って居るのか解りかねます」
「だからぁ、二重人格なんだってば」
「そこは兎も角」
青年の説明に寄れば、ゴミ扱いで燃やされてから此処に来て一カ月経って居るとの話だ。
「愕然としております。気付かなかった。なぜ気付かなかったのだろうかと。まだ2~3日しか経過して無い物とばかり思って居りました」
「まぁそんな事はどうでも良いんだけどもね」
この興味の無さにも愕然とします。
いや、ほら、仕事って仰っていたじゃないですか? 仕事なんでしょ? 仕事。どうでも良くは無いでしょう?
否、滅されたい訳では無いんですがね。
「僕って二重人格でしょう? いつもそこで嫌な思いをするわけなんだよね」
どうやら愚痴を聞かされて居る様だ。
「あいつは釘バットを好んで使うけど、僕は釘バットは違うと思うわけ。やっぱり、信念としてはバールで行きたいわけよ。あれの正式名称知らないけど。僕はバールって呼んでる。悪魔の名前と同じとか良いよね。痺れるよね。でもあいつは釘バットが好きでバールは好みじゃないらしくてちょいちょいバールをどっかに隠すんだよね。でもまぁ腐っても僕の一部なわけだから探して探せない訳無いわけ。でもむかつくしあいつの釘バットをゴミに出してやったら、バールを捨てやがってさぁ」
えーと。どこら辺が二重人格……?
「だから、釘バットが好きな人格とバールが好きな人格だってば」
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