第20話

満足したのか、棚の上に座らせられると、眼鏡の男は部屋を出て行った。


ちなみに、棚の上には先客が居り、服を着たペンギンの縫いぐるみと陽気なポーズを取る蛙の人形に挟まれた格好である。




いつの間にやら最初の部屋から移動しており、ヒトの目が、否、人形の目が見えないのを良い事に連れ込まれたに違いない。


恐らくは最初の部屋より奥の部屋であろう其の部屋には、窓らしい窓が無く、置かれる前に見た棚には多くの人形が鎮座し--少なくともこの自分よりまともな見た目をしていた--縫いぐるみや日本人形やアンティークドールや様々な人形に混じって、開け放たれた向う側には、人形の腕や足や胴体や生首が無数にぶら下がって居た。




狂気すら感じると云うか狂気しか感じない。折角だが、お暇したい。


腕を動かして見れば、動く。やはり眼鏡の男が居なければ動けるのだ。


腰を浮かし、棚の下を覗き込む。


高いが、燃焼炉を這い出た時よりも困難では無さそうではあるし、あの時よりも比べ物にならない程状態が良い。


恐らく現在、わたくしの人形生最高に状態が良い。


好し、飛び降りよう。


ひょういと飛び下りれば、身体も軽い。


履かされたもこもこした長靴のお陰で音も出ない。


先ずは扉を開けて外へ出て、其れから、普通の女の子に拾って貰うのは厳しいだろうか?


保育園や幼稚園や、子供の集まる場所へ忍び込めば気付かれる事無く居られるだろうか。


何にせよ先ずは扉である。


幸い、棒状のノブを下に下げて開けるタイプ。なら飛び付けばなんとかなりそうである。


ドアノブへ飛び付くべく、大きくジャンプした。




瞬間、




思い切り、弾き飛ばされた。

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