第19話

「ほぉら、可愛くなったねぇ」




言い乍、鏡台の真ん中へ戻される。


くるりと後ろ向きにされ、鏡と真正面から向かい合う。


眼鏡の男はゴムを外し、七色の髪を梳かし始めた。




こ……これがアタシ……!?




一応、なんとなくそう言わなければならない空気である。


化粧というか、塗装を施され、睫毛まで生えた、ちゃんとした--ちゃんとの意味が危殆では或るが--人形の頭には成っていた。


確かに工場の片隅に落ちて居た頃とは別人、別人形である。


しゃくしゃくと音を立てて、髪が切り揃えられて行く。


前髪も後ろも長いまま同じ長さで揃えただけで、一旦鋏を置き、顎に手をやって何やら考えている。


再度、輪ゴムで髪を括り、引っ繰り返し、首の穴から何やら覗き込んで何やら指を入れ、全裸の身体の首にも何やら紐状の物を挿仕込み、あれよあれよと言う間に、魔法の様に、頭と身体が再会を果たして居た。


なんだ、これは如何云う仕組みなのか。


あんな所やこんな所や大事な所まで舐め回す様に見られ弄繰り回され、凌辱された気分も甚だしいと云うのに、挙句感謝までしなければならないと云うのか。屈辱に塗れながらも、感謝を言葉に出来ぬまま抱えて行けと云うのか。




「お洋服着ましょうねぇ」




そう言って、眼鏡の男が着せたのは、赤い上下。


もふもふの。


袖と裾に白い縁取りの有る。


聖人の衣装。




ノーパンサンタの誕生である。

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