第17話

その後、彼方此方削られたり何か付けられたり干されたり濡らされたり塗られたり何やらして……。


気付けば髪が生えて居た。




「余ってるやつの詰め合わせだから、無いよりマシかな位の仮置きのつもりだったけど悪く無いねぇ」




首だけ棒に刺さった状態で鏡に囲まれた空間--女性の使う三面鏡だ--の真ん中に置かれ、印刷だった目は硝子か何かが入っており、長い髪はピンクや紫や金色や銀色や水色や…七色をしていた。


瞳は金色で……あ……山羊だ。是は山羊の目だ…。




視覚を取り戻し、周りを見渡そうにも、鏡か眼鏡の男しか見えない。




「髪型悩むなぁ。目は垂れ眼気味にしてみたんだけど、如何思う? あれ? いない」




恐らく青年に声を掛けたつもりだろう、振り返り、拍子の抜けた声を出した。




「もう、何処に行っちゃったのかなぁ…。目がちゃんとくっ付いたら、お化粧しようねぇ」




独り言の後、此方ににこやかに話し掛けて来る。


立ち上がった男の向う側に、組み立てられた自分の身体が見えた。


随分と血色が良い色に仕上がって居る。


何か違う気もしたが、何が違うのか良く解らない。


取りも敢えず腕を動かして見る。


動いた。


右手が挙がった。


左手も挙げて見る。


万歳の状態で、何か違和感を覚える。


これは、もしや。


もしや……


肘が曲がる!!!


肘の曲げ伸ばしが出来ると云う事はまさか……


膝も曲がる!!!!!!


なんだこの稼働域!!!


スクワットも思いのままではないか!!!




「え、何やってるの、お前? …あ…」




どさぁっ。




青年の声と、何かが崩れ落ちる様な音がした。


眼鏡の男が、床に、崩れ落ちていた。

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