第14話
手荒く鼻血やら何やらを落とされ、再び塵芥挟みで摘まみ上げられ、雑巾で拭かれる。
「何やってるの、騒いで御近所に迷惑掛けては駄目でしょう?」
優しい低い声が降って来た。
雑巾で顔を覆われ、その姿は見えない。が、恐らく、男性。若くは無さそうだ。
「いやいや、迷惑を掛けたのは僕じゃなくてストーカー共ですよ」
「またそんな事を言って。騙されないよ? 何か仕掛けたのでしょう?」
言いながら、雑巾が顔から退けられる。
眼鏡の細身の優しそうだが凡庸な男性が現れた。
「またこんな変な物拾って来て」
……変……まぁ、変だが。変だろうが。
「大体、こういう人形は洗うならきちんとバラさないと」
言いながらひょいひょいと手慣れた手つきで両の腕と足と首を……
「ほら、中に水が入り込んでた」
手際良くバラバラにされて針金に干されて、えーと、何是?
「扱いが乱暴過ぎだよ。人形が可哀想じゃないか」
「それ、頼むよ」
「また妙な物押し付けて」
……妙……まぁ、妙だろうが……。
「君。気に入られちゃったねぇ」
眼鏡の男性が、しみじみと話し掛けて来た。
返答するか否か暫し迷うが
「そいつ、喋るよ?」
「脅かすのは無しだよ。……本当に喋るの……?」
「呪いの悪霊人形だもん。そりゃ喋るよ」
「また僕をからかってるんだろう。辞めなさい全く」
「本当だって」
「もう良いよ。リペアするんだろう? 材料取って来るから悪戯しないで置いてね」
「本当なのに。なぁ?」
同意を求められたが、之は人形の振りをしていた方が良さそうである。
人形だが。
禿げで全裸で現在五体不満足の人形だが。
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