結んで開いて綻んで⑥
放課後になり、大和は多少緩みかけていた二人の仲が再度悪化したことに頭を抱えていた。
―――やっぱり、律くんに頼まないと駄目だよ・・・。
―――僕だけが解決しようとしてもできない。
教室から貴人と博人がいなくなったことを確認し、律の席へと駆け寄った。
「ねぇ、律くん。 二人を仲直りさせるために協力してくれないかな?」
「・・・」
「僕一人だと何もできなかったんだ。 だから律くんの力が必要で」
「どうしてそんなに仲直りをさせたいんだ?」
「二人はいつもすぐに仲直りをするの?」
「まぁ、ほとんどはな。 翌日になったらいつも通りに戻っていることが多い」
「だったら今回、すんなり仲直りしないのは僕のせいだ。 ・・・だから、絶対に仲直りさせたくて」
「お前の私情に付き合う気はない」
「もし貴人と博人が仲直りをしたら、僕は三人の輪から抜けるから!」
「・・・」
その言葉に一瞬律は反応した。
「・・・だから、お願い。 手伝ってほしい。 そしたらもう迷惑はかけないから」
必死に頼み込むと彼は嫌々ながらも了承してくれた。
―――よかった・・・。
―――だけど、内心は複雑だな。
―――僕に抜けてほしいから、手伝ってくれるんだよね・・・?
もしそうなら素直に喜べない自分がいる。 だが元々嫌われていたことは分かっているのだ。
―――でもいいんだ、三人の関係が僕がここへ来る前の時みたいに戻ってくれるなら。
「それで律くんは、二人を仲直りさせるにはどうしたらいいと思う?」
「あの二人は本当にくだらないことでしょちゅう喧嘩をするんだ。 折角なら今回で、お互いの大切さを思い知らせればいい」
「お互いの大切さ?」
「そしたらしばらくは喧嘩をしないだろ」
「・・・一体、何をする気?」
律の作戦を聞いてみた。 が、それを聞いて驚くしかなかった。
「えぇ!? ちょッ、それは駄目だよ!」
「どうしてだよ」
「だって、流石に危険・・・」
「片方を危ない目に遭わせないと、お互いの大切さに気付けないだろうが」
「万が一、二人が溺れた時はどうするの!?」
「そしたらそこで待機している俺が助ける」
「・・・」
「あの二人は背が小さいから、そのまま波に巻き込まれる可能性はあるかもな。 それを防ぐために俺がいるんだろ。 でなかったらこんな案は出さない」
―――律くん、頼もしい・・・。
だがそう思ったのは一瞬だった。 律の口から信じられない言葉が飛び出したのだ。
「だから俺はいつでも助けに行けるように近くで待機しているから、突き落すのはお前の役目な」
「ッ、え!? 何それ、律くんだけズルい!」
「何がズルいんだよ」
「だってそんな、心が痛くなるような役目・・・」
「二人を仲直りさせたいんじゃなかったのか?」
「それはそう、だけど・・・」
「別にしたくないならいいさ。 俺も協力しないだけだ」
「・・・」
そう言われては素直に了承するしかなかった。
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