第22話 再会
トーレスが扉をノックする。すると知らない男の声で問い掛けがあった。
「だ、誰だ!」
「トーレスです」
「トーレス? そんな奴いたか?」
「中にリュートかシュウ、もしくはセシリアかアゼリアはいますか? ミューレでも良いんだけど」
「リュート様を知っているだと? ちょっと待ってろ」
しばらく待っていると扉の向こうから懐かしい声が聞こえてきた。
「トーレス様っ! 本当にトーレス様なのですか!?」
「その声はリュート! うん、トーレスだよ。ただいま」
「お……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
門が凄まじい勢いで開いていく。しかし、全て開きトーレスの姿を見たリュートは激昂した。
「貴様……、きさまぁぁぁぁぁぁぁぁっ! この魔族っ! トーレス様の名を語るとは……っ! 許さん……許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ち、ちょっと待てリュート! 俺はトーレスだってば!」
「えぇいっ!! まだ言うかっ! どこがトーレス様だっ!! トーレス様は人間だっ!! 断じて魔族なんぞではないわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「だから、魔族になったんだってば。裁縫の得意なリュート」
「なっ!?」
「俺が作ってあげた剣は役に立ってる? シュウは強くなったかな?」
リュートの手から剣がこぼれ落ちる。
「トーレス……様?」
「うん、トーレスだ。いきなりいなくなって悪かった」
「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リュートはそのまま崩れ落ち号泣した。そしてその騒ぎを聞き付けた他の者達が門に集まってくる。
「ま、魔族っ!? リュート、何泣いてんだ!」
「やぁ、シュウ。今戻ったよ」
「あ? 魔族がなんで俺の名を……」
「……あ! も、もしや……トーレス様っ!?」
「セシリア、なんでわかったの……。面影ないよね俺」
「わかりますともっ! わからないわけがありませんわっ! あぁぁぁ……なんというお姿に……じゅるり」
「じゅるり?」
相変わらずセシリアはセシリアだった。
「トーレス、あんたなんて姿になってんのよ」
「アゼリア。ははっ、成り行きでね。中に入っていいかな? 今までの事を説明したいからさ」
「……その前に。トーレス、あなたは私達の敵になったの?」
その問い掛けにトーレスは笑顔でこう答えた。
「まさか。俺は何になったとしても皆の味方だよ」
「……そ。なら入りなさいよ。話を聞こうじゃないの」
「ありがとう、アゼリア」
そして一同は屋敷に集まりトーレスの話を聞く。そして話を聞いて真っ白に燃え尽きたのがセシリアだ。
「わ、私のトーレス様が……」
「セ、セシリア様!? お、お気を確かにっ!」
燃え尽きたセシリアを運んでいくカトリーナだった。
「しかし……まさか本当に道に迷って中央に行かれていたとは……」
「いや、なんか魔物強いなーとは思ってたんだけどね」
「やはり一人で行かせたのが間違いでした。申し訳ありませんでした」
そう頭を下げるリュート。
「いや、俺はこうなれて逆に良かったと思ってるんだよ」
「はい?」
「いやね、俺が道に迷わなかったら魔族と仲間として出会う事もなかっただろうし、世界の真実も知る事はなかったと思うんだよ」
「……なるほど。では本当に魔族は人間の敵ではなかったと?」
「うん。悪いのは人間の方だよ。今の世界は聖神教団によって真実を歪められた世界になってるんだ」
そう言い、トーレスは立ち上がる。
「だから俺は魔族の味方をする。そして世界をあるべき本当の姿に戻すんだ。人も魔族も他種族も全ての人類が手を取り合い助け合える世界にしたい。その為には聖神教団を潰すしかない。これから俺は修羅の道を歩む事になる。そこで今一度皆に問いたいんだ」
トーレスは一呼吸おき、全員の顔を見渡した後に口を開く。
「ついてきてくれとは言わない。これからする事は戦争だ。俺は……第二次人魔大戦を起こす。もしかしたら沢山の命を奪う事にもなりかねない。皆には無事でいて欲しいし、できたら汚れて欲しくないんだ。だから……ここから先は本当に俺と共に世界を敵に回していく意思のある者だけ俺に力を貸して欲しい……っ!」
そう願い、トーレスは頭を下げた。
その願いに対し、まずリュートが立ち上がる。
「水臭いですよ、トーレス様」
「リュート……」
「俺の手はとっくに汚れています。俺は戦場に立ち、この手でいくつもの命を奪ってきました。そして……俺はリュート様の剣です。例え人の身にあらずとも生涯主として仰ぐ事は変わりませんよ。俺はリュート様について行きます」
「リュート……、ありがとうっ」
それにシュウも続く。
「トーレスにリュートもいねぇんじゃ楽しくねぇからな。俺もトーレスについてってやるよ」
「シュウ、ありがとうっ!」
そして次々と初代メンバーの手が挙がる。アゼリア、ミューレ、その他の最初にトーレスと共に流れ着いたメンバーは皆トーレスについていくと決めた。
「わ、私もついていきますわっ!」
「セシリア? だ、大丈夫なの? 顔が真っ青だけど……」
「大丈夫ですわっ! わ、私はまだ負けてませんからっ! そして……生涯尽くすと決めたのです!」
「セシリア様が行かれるなら私も行くしかあるまい。トーレス、もし邪道に堕ちたらセシリア様が何と言おうが私はお前を斬る。良いな?」
「カトリーナ……。うん、その時は遠慮なく斬ってくれ」
それから初代メンバーはトーレスがいない間に救った追放者達に事情を話した。そして話を聞いた追放者達は拒むどころかやる気を漲らせた。
「あのクソ教団をぶっ潰すんだろ? なら喜んで力になるぜ!」
「だな。世の中が自分らのモノだって威張ってるあいつらに一泡ふかせてやりてぇよな!」
「私も……何かの役に立つなら手伝います!」
「皆……! ありがとう……っ、ありがとうっ!」
こうして追放者達を仲間にしたトーレスはテレポートを使い魔王城へと戻るのであった。
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