第15話 覚醒
リュートに背を支えられ喉の渇きを潤す。
「ふうっ……生き返ったぁ~」
「トーレス様、いったい何が……」
「あ、うん。実は……」
説明しようとしたトーレスの腹から栄養を催促する音が鳴り響いた。
「……ご飯食べながらでも良い?」
「気付かずに申し訳ありませんっ! では俺達の報告も兼ねて食堂に行きましょうか」
トーレスは食堂に行き、自分に何が起こったかみんなに説明した。
「「「「ギ、ギフトが進化!?」」」」
「うん。何か急に眠気がきて目を開けたら白い空間にいてさ。そこに神様がいたんだよ」
「「「「か、神……様……?」」」」
トーレスはそこで何があったのか説明し、ギフトが【鳥獣戯画】から【創造魔法】へと進化した事を話した。
「ギフトとは進化するものだったのか……」
「うん。なんでも自分のためじゃなく、誰かのために沢山使うと進化するみたい」
そこにシュウが口を挟む。
「するってぇと……俺のギフトも進化したりする?」
「多分ね。ギフトは他人のために使うものだって神様が言ってたから」
「ま、マジか! これって役立たず認定が覆るんじゃ……!」
「覆るって言うか、神様は今の世界が歪んでるって言ってたよ。そもそもがギフトで優劣をつけるのが間違いなんだって」
そこでリュートが唸る。
「なるほど。どんなギフトでも可能性がある。つまり、そこで判断する聖神教団は間違っていると、神自らが仰られたのですね?」
「う、うんまぁ……。教団の名前は出なかったけど、多分そうなんじゃないかな」
その言葉を聞いたリュートは立ち上がった。
「聞いたか皆! 神自らが聖神教団を否定した! これはつまり……聖神教団は神にこれっぽっちも愛されてなどいないと言う事! そして……我らがトーレス様が現在一番神に愛されているっ! ギフトの進化を体験されたトーレス様こそ正しく生きておられるのだ! 正義は……正しきは我らの方っ! ならばする事は一つ! 聖神教団によって歪められた世界を正しき道に戻そうではないか!」
「「「「お……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
集まった者達は沸き上がった。そして自分達は役立たずなんかではないと、未来があるのだと奮い立った。
「そ、それよりさ! リュート、調査の結果は?」
「え? ああ、あまりの嬉しさに忘れていました。ごほん、ではこちらからの報告を……」
リュートは今のところ悪人達はいない事、それと他にも追放者が流れ着いている箇所がある事、そして中央に近付けば近付くほど魔物が強くなっていく事を報告した。
「そっか。やっぱり他にも追放される場所があったんだね」
「はい。そこでまず俺達がすべき事は、海岸をぐるりと一周回りいくつか拠点を築く事だと考えます。戦力は分散されてしまいますが、送られてくる者達を救う事、それと悪人の侵入を防ぐ事が第一かと。悪人と魔物、両方を相手にしていてはいつまでも中央には辿り着けないでしょう」
「なるほど……」
トーレスはその提案を受け考える。
「わかった。まずは皆で協力して追放者達が流れ着くポイントを把握しよう。その間に僕は島をぐるりと一周外壁と通路を創るからさ」
「お一人でですか!? 危険ですっ! トーレス様はまだ戦いが……」
「大丈夫、今回の進化で僕も戦えるようになったんだ」
「え?」
「見せた方が早いかな。リュート、ちょっと森に入ろうか」
「はっ! お供いたしましょう!」
そうしてトーレスはリュートを連れ森に移動する。
「トーレス様、グレートベアです」
「うん、じゃああれからいこうか」
「あ、あれを一人でですか!?」
《グルルルル……》
森には巨大な魔熊がいた。そいつは同じ魔物を殺し、その肉を食べていた。
「まぁ、見ててよ」
そう言うと、トーレスは魔熊に向け手をかざした。
「荒れ狂え剣の刃……【ソードストーム】!!」
「なっ!?」
《ガアァァァァァァァァッ!?》
突如無数の刃が現れ魔熊を切り裂いていく。魔熊は突然の攻撃を食らい、成す術なく地に伏した。
「グレートベアはランクC……、それを一瞬で……!」
「これが僕の進化したギフトの力だよ。ね、僕も戦えるでしょ?」
戦えるどころの話ではなかった。リュートは驚愕していた。
「で、ですが魔法は魔力を……」
「ああ、これはギフトだから。魔力は消費しないんだよ。それと、今普及してるような一般的な魔法じゃなくて、僕がこうしたいなって創造した魔法が放てるんだよ。何発でもね」
「き、規格外すぎる……」
「ははっ、神様のところでいっぱい修行したからね」
それを聞いたリュートは涙を流した。
「え? リュート? な、なんで泣いて……」
「おぉぉぉぉぉぉっ! トーレス様っ! もはやトーレス様に並び立つ者はなしっ!! そう、神の下で修行するなどまさに神の使徒! トーレス様の進む道こそ神の進む道!」
「お、大袈裟じゃない?」
「足りないくらいです。現に神と会えた者など聖神教団にはおりますまい。トーレス様、その御力で虐げられている者を救いましょう」
トーレスの力を見せつけられたリュートは熱狂的な信者となったようだ。
「うん、その考えには賛成かな。僕達みたいな被害者をこれ以上出さないためにも頑張ろう!」
「ははっ!」
こうしてリュートはトーレスの力を認め、単独での行動を容認するのだった。
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