1111111111111111111111111111←先に内容に登場する1を書き出しました

ちびまるフォイ

ぜろに賭ける

「1」の国の世界は平和そのものだった。

1たちはひとつのものを、ひとつのものを交換する単純でつつましい生活をしていた。


1以上のものを求めないはずの世界で、1つだけ欲深い1が考えた。


「妻も1人。食べ物も毎日1つ。ああ、なんで全部1つずつなんだ。もっと数字がほしい!」


欲深い1は様々な数字がある「エンシュウリツ」を見に行った。

そこにはたくさんの数字があふれていた。


「す、すごい! 見たことない数字ばっかりだ!」


1しか知らなかった1は新しい概念を持ち込もうとエンシュウリツを1の世界に持ち帰ることに。

帰りのヘリコプターの中でエンシュウリツを眺めているときだった。


「あっしまった!!」


ぐらりとヘリが傾いた拍子にエンシュウリツを1の海に落としてしまった。

エンシュウリツが収められていたカプセルは海面に落下した衝撃で破れてしまい、中の数字が溢れ出した。


「おいおいおい……あれやばいんじゃないか……」


空から海がみるみる31415926535…と数字に汚染されているのを見て、1は青ざめたがもう遅い。

1でしかなかった海は数字を得てしまったことで、ますます大きく膨らんでいく。


あっという間に海面は高くなり、空を飛んでいた1のヘリをも呑み込んでしまった。


「うわぁーー! 助けてくれーー!!」


1は数字の海に飲まれて、エンシュウリツの1部に取り込まれてしまった。


一方、1の国では普段見ている1の海がバカでかくなっているのを遠目からも見てわかった。


「に、逃げろーー!」

「早く高いところへ!!」

「無理だ! 飲み込まれる!!」


自分の1が失われまいと、1たちは必死に逃げていく。

大きく膨れ上がったエンシュウリツの海は逃げ惑う1たちを飲み込んでいく。


もはや巨大な怪物のように巨大化したエンシュウリツを見て、1の国のいち王側近は慌てた。


「いち王! はやくお逃げください!」


「バカもの! 1の民が助けを求めているのに逃げられるか!」


「我々ではあの巨大な数字をどうにもできませんよ!!」


王も1人、側近も1人。この数だけで膨大な数字をもつエンシュウリツの被害を抑えることなど不可能。


「やむをえない……アレを使う」


「いち王! 正気ですか!?」


「もはやこれしかないのだ!!」


いち王は王室の地下に眠る禁断の数字に手をかけた。

かつてこの地に眠っていた創生の数字にして終焉の数字。


「0……。これを使う時が来るとは……」


「いったい何をする気ですか!?」


「0を大量に空からエンシュウリツに向かってまくのだ。

 そうすれば0に取り込まれて収まるだろう」


「いち王! お忘れですか!? 我々の祖先が0で1度滅んだことを!!」


「わかっている! だがこれしかないのだ!!」


現在の1の国がある地下から発見された、創生の数字である0。

祖先たちは0の使い方を間違えたせいですべて0になってしまった。


ふたたび0が1になるまでには多くの歳月を必要とした。

その禁忌をいま1度行わねばならない。


いち王と側近は0を抱えヘリコプターで空にあがった。


「さあ、いち王! 「×」の取り付けも完了しました。0をまきましょう!」


「……そうだな……」


「いち王。どうしたんですか」


「……ダメだ。やはりワシにはできない……この国を0にするなど……」


「いち王、しっかりしてください! そりゃ0に触れた1たちは全部0になります。

 1の建物もなにもかも0になってしまいます!

 しかしこの災害を止めるにはこれしかないんですよ!」


病巣を取り除くために、問題ない他の部分もまとめて取り除かなければならない。

そして取り除かれるのはなんの罪もなく、助けを求めているだけの1たちだ。


「いち王! はやく!!」


「ぐっ……うああああ!!」


いち王は「×0」のかけるをもぎとり、0を小さく握りつぶすとエンシュウリツの海に放り投げた。


「いち王なんてことを!? ×がないと0にならないんですよ!?」


「やはりワシには1の民を犠牲にすることなど……できないっ!」


「ああ、もう終わりだ……」


側近は絶望し、今からエンシュウリツの海に入水しようとした。

その目に映ったのは小さくなった0が海に落ちた瞬間だった。


小さくつぶされ指数となった0はエンシュウリツの海に取り込まれると、まばゆい光を放つ。



3141592653589793238462643383279...⁰


=1



あれほど数字に荒れ狂っていたエンシュウリツの海は、もとの1の姿を取り戻して収まった。

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