約束

 そして、現在に至る。

 ラッテ人間ベリーヌは、古城へと辿り着いた。


 ラッテが地上へ降り立つと、ラッテの背中からベリーヌが軽快に飛び降りた。

 そして目の前には、黒竜が5年前と変わらない鋭い眼差しで、ベリーヌ達を

見据えていた。

 

「お久しぶりです」

 ベリーヌが言うと、黒竜の言葉がベリーヌの頭の中へ響き渡る。


「余計な言葉は不要だ、その竜を同胞として認めよう」

 その言葉にベリーヌは微笑むと、黒竜へ問いかける。


「あの、一つだけ教えて下さい」

 ベリーヌの問いに対し、黒竜は静かに耳を傾けた。

 

「ラッテをここから追い出したのって、最初からこれが目的だったのでは

ないですか?」

「私にウィリィさんのことを打ち明け、ラッテと一緒に過ごす時間を与える

ために……」


 最強の生物を目の前にして凛とした態度を取り、見透かしたような目で見据える

ベリーヌの姿は、黒竜の目にはウィルリエルと重なって映った。

「憶測だ」


 黒竜からの答えを聞いたベリーヌは、それ以上は何も聞かずに

黒竜へと頭を下げる。


 そして、ラッテへ視線を向けると、ベリーヌは笑顔で話しかけた。

「ウィリィさん……いえ、お母様に代わって皆と

この場所を守ってあげてね」

 そう言うとベリーヌはラッテの頭部を抱き寄せた。


「ありがとう、ラッテ……」

その時、ベリーヌの頭の中へある声が響き渡った。


「ありがとう、ベリーヌ……」

その声はウィルリエルによく似た、優しい声だった。

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