寝る前にどうぞ
事故物件に住んだら幽霊が可愛すぎなんだがwww
これは俺が体験した……というか、今も現在進行形で体験していることだ。
文章書くのは上手くないから訳が分からんと思うが、よかったら聞いてくれ。
今から三か月ほど前、俺は上京のために物件を探していた。とは言っても金がないので、不動産屋には「一番安い部屋で」とだけ言って探してもらうことにした。
一件目は駅徒歩20分。1Kの6万5千円。築年数は25年。部屋の中はまあまあ綺麗だったが、早々に予算オーバーだし、近所が深夜までやってる居酒屋ということで見送り。
二件目は駅徒歩40分。1LDKの4万3千円。部屋の中も綺麗だし、築年数も周囲の環境も申し分ない。予算的にもそれぐらいだったのでおおよその
「あの……もっと安いとこないんすか?」
ダメもとで聞いてみると、担当のお兄さんの顔色が変わった。社長みたいなおっさんを呼んで「……あのファイル出していいですか?」とか聞いてる。俺はなんのことか分からんので、二人のやりとりを見てた。
「……お兄さん、もっと安いとこはあるけど、本当にやばいよ? それでもいい?」
とおっさんが聞いてきた。とにかく金もねえ俺はすぐに頷いた。
そうすると担当の兄ちゃんが席を立って、辞書みたいに分厚いファイルを持ったおっさんが代わりに俺の前へ座った。
おっさんはファイルを開くと、ある物件を見せてきた。
駅徒歩30分。築年数30年の木造アパート。間取りは1K。風呂なし。家賃2万円(+初回共益費3000円)
「めっちゃいいじゃないすか」
俺がそう言うと、おっさんは難しい顔をして説明を始めた。
「……この部屋ね、一年前ぐらいに女の子が殺されたっていう部屋でね……。それから物が勝手に動いたり変な音がしたり、足音と声がしたり、電気が勝手についたり消えたりしたり……で、一年で六人も住む人がかわってるんだよ。しかも、前に住んでた人がそのまま夜逃げみたいに出て行っちゃって、荷物もなにも片付けられてないんだ」
おっさんは本当に困ってるようで、めっちゃ深いため息をついてた。俺はというと、事故物件なんかほんとにあるんだなあーって思いながら聞いてて、「へえ~」みたいな声で適当に相槌打ってた。生まれてこの方心霊的なもんとは関わりもなかったし、ホラー特番もゲラゲラ笑いながら見てる俺にとって、自分の部屋なのに
「前の人の荷物を捨てる場合、費用はうちが出すけど、引っ越し費用は出せないよ。それでもいい?」
「いっすよ。ここでお願いします」
俺は即答した。それぐらい金がなかったのもあったし、幽霊が出るならなんかのネタになりそうだなーっていう楽しみもあった。
そんな感じで、俺はその事故物件に決めた。
部屋の中は思ったほど荒れてもなかった。ただ、前の住人の荷物らしきガスコンロとかキャリーケースとかがあったが、デカくて邪魔なんで不動産屋のおっさんに引き取ってもらい、使えそうなもんだけ置いておいた。
近くの銭湯に行って、荷ほどきは明日にしようかと思い畳の上に布団を敷いて横になる。幸いなことに電気もカーテンもそのままだったので、あと揃えるのは食器とか家電かなーとか思いながらスマホいじってたら、いつの間にか寝落ちした。
すると突然、ズン、と腹に何かが落ちたような衝撃で目が覚める。
噂の金縛りってやつかよ、と思いながらうっすら目を開けると……長い髪の女の子が俺の腹の上に乗っていた。
しかもめっちゃ可愛い。
ホラー映画とかの幽霊とは全然違う。むしろ、二次元の漫画とかでよくいる美少女幽霊だ。
『……け……て……け……』
なんかぼそぼそ言ってるから耳を澄ませてみると、
『……で、でてけ……でてけ……でていけ……でて、いけ……』
ってずっと言ってる。怖がらせようとかじゃなくて、ちょっと恥ずかしそうに。
なんかそれで一気に現実が押し寄せてきたので、改めて自分の状況を確認してみる。まず金縛りで間違いないとは思うのだが……なんていうかゆるい。段ボール縛る時のゆるさって言ったら分かると思うが、あの、抜けなさそうで抜ける……そんなゆるさだった。
なので俺、震えながらも指を動かせるか確認し、声が出るかも試してみる。……うん、問題ない。こんなに可愛いし、出て行かせたいのか驚かせたいのか、恥じらいながら『出て行け』と言われても、正直全然怖くないのだが……。幽霊としてはどうなんだと思う。
「……君、ここの子?」
『でてけ……でて……えええ⁉ な、なんでしゃべれるの⁉ な、なんでなんで⁉』
俺の腹の上でわたわたする幽霊ちゃん(仮)
『で、でていけ~! でていけ~!』
「いや、今日からここ
『うわあああ⁉ またしゃべったあああ⁉』
驚いた拍子に俺の腹の上から転がり落ち……ごんっ! という鈍い音とともに壁に頭をぶつけた。
『ふ、ふぎゅう~……!』
頭を抱えて転がり回る幽霊ちゃん(仮)
あ、幽霊って痛みも感じるんだ……。物を通り抜けるとかできんのだな……。
幽霊ちゃんがゴロゴロ転がり回るのをじーっと見つめる俺。観察して分かったのは、この子は9歳ぐらいっぽい。服装は白いワンピースで……時々パンツ見えてる。やばい。事件的な危なさだ。俺は紳士なのでがっつり指の隙間から見ましたよ。ええ。
んで、しばらくしてこんなことしてる場合じゃねえとハッとなった俺は、とりあえず隅っこで悶えている幽霊ちゃんに話しかける。
「……えーっと、大丈夫?」
『だいじょうぶじゃない!』
涙目でそう言われた。どうやら痛いものは痛いらしい。
『お前のせいなので、でていってください!』
「うーん、まずは『こんばんは』かな?」
『うるさい! はやくでていけ! ここはわたしのおうちなんだー!』
「……そっかあ。挨拶ができる子だったら、アイスでも買ってあげようと思ったんだけどなあ……」
『こんにちはおじさん!
「うーん……俺はまだ『お兄さん』なんだけどなあ……?」
きらきらとした
しかし、買うといった以上『やっぱなし』は可哀想なので、近くのコンビニに行くことに。
「えーっと、君も来る?」
『おじさんが迷子にならないように、わたしもついて行ってあげるね!』
もう玄関にいた。どうやら瞬間移動みたいなことができるみたいだ。
「ああハイハイ……」
**
夜の街は静かだ。よく見ると幽霊ちゃんは足首の方が透けていて、やっぱり幽霊なんだなーって思った。書いてる途中で思ったが、我ながら冷静すぎる。
話を戻す。思い出しながらだから書き込み遅いのすまぬ。
『ア、イ、ス♪ アイス♪』
かわいい歌を歌いながらスキップしてる幽霊ちゃん。すげえかわいい。娘がいる父親ってこんな気分なんだなって思った。と同時に、これ幽霊ちゃんが生きてたら
『コンビニ! 明るいね!』
コンビニを指さしてはしゃぐ幽霊ちゃん。かわいい。
『アイス♪ アイ……ぶにゃあ⁉』
しかし、幽霊ちゃんは自動ドアに思いっきり顔をぶつけてしまった。
『鼻がなくなった……! 鼻がなくなった……!』
自動ドアの前で鼻を押さえてもだえる幽霊ちゃん。これ、監視カメラには俺一人しか映ってないんだろうなあ……。
「お、お客様……何か……?」
なかなか店に入らないのを不審に思い、店員が話しかけてきた。
「な、なんでもないっす……」
店員さんにそう言いながらそそくさと店の中に入る俺(30)
『アイスいっぱいあるね! アイスいっぱいあるね!』
幽霊ちゃん、なんかテンション上がったのか『うおおおおお!!』って叫びながらめっちゃ店内を走り回る。
「あんま走んなよー」って思わず言ってしまった。そのあとにハッと気がつく。幽霊ちゃんは幽霊ちゃんだ。言っている意味が分からないと思うがつまりこういうことだ。
今、俺は一人なんだよな。
バッとレジに顔を向ける。立ってるハゲたおっさん店員が「うっわ……マジかコイツ……」っていう目で俺を見てた。帰りたい。ていうかこのコンビニ、もう二度と来れねえ。
『これとこれとこれー! おじさん早くー!!』
幽霊ちゃんは幽霊ちゃんでアイスが入った冷凍庫の中を指さしている。全部俺に買えと言っているらしい。
幽霊ってアイス食えるの? とか、幽霊ってこんなに可愛いもんなの? っていう疑問は一旦置いておこう。
これ以上「ヤッベぇぞこいつ……」という目で見られるのも泣きたくなるので、幽霊ちゃんが指さしてたアイス(そこそこ高い)3つをカゴにぶち込んでレジに行く。
「えー、お会計1763円です」
たかい。一応アイスの他にいろいろ夜食も買ったけど……引越ししたばっかの俺には痛い出費である。しかも会計の途中で思い出したけど、俺、冷凍庫どころか、冷蔵庫まだ買ってないんだが? 夏のかき氷でも一杯で飽きちゃう俺にとってはアイス3つなんて無理よ。余ったらどうすんのこれ。
そこらへん考えてなかった俺はマジでポンコツでした。はい。
「ありあっした~」
会計を終え、コンビニから出ようとした時。
『ん……』
って幽霊ちゃんが俺の服をくいくいって引っ張ってきた。
「え、どしたの……?」
小声でそう聞き返してみる。幽霊ちゃんは店の中をじっと見て、ちょっとしょんぼりした顔で
『ママ、いなかった……』
って言った。
「え?」
どういうこと聞き返してみようと思ったが、レジのハゲがまた「アイツマジやべー」的な目で俺を見ていたのでさっさとコンビニを出た。
幽霊ちゃんの透明な手を握って、夜の道を二人で歩く。厳密に言うと俺一人だが、それを考えちゃうと寂しくなるので、今は二人だ。
さっきのことを聞いてみると、幽霊ちゃんはコンビニではしゃいでいた時とは真逆で、ちょっとしょんぼりしながらぽつりぽつりと話してくれた。
『あのね、学校が終わったらあそこで待っててねって、ママがいったの。でもね……暗くなってもママが来なくて……。それでね、ママのお友達っていう人が来てね、一緒に帰ろうかっていわれて。でも、ママを待たなきゃダメなのっていったら、そのおじさんがね、ママはもうおうちにかえってアイスを食べてるよっていったの。だからね、そのおじさんといっしょにおうちにかえったの。でもね、おうちにもママ、いなくて……。ママ、どこにいるんだろう……』
幽霊ちゃんはますますしょんぼりしてしまった。
幽霊ちゃんの話を要約するに……幽霊ちゃんはそこのコンビニで母親の知り合い(多分全然関係ないおっさん)に声をかけられそのまま一緒に家に帰ってしまったらしい。俺はその話を聞いて、幽霊ちゃんはそのおっさんに殺されてしまったと予想した。それなら女の子が殺されたって、この部屋の契約の時におっさんが言っていたこととも合致するし。
幽霊ちゃんの見た目は9歳ぐらいだから、去年だとしたら小学5年生あたりか。……母親の知り合いだって言われたら疑わんよな、そりゃ。
そう考えると、なんだかすごい幽霊ちゃんが可哀想に思えてきた。
「……俺の前にもあの部屋に何人か来たよね? なんで追い払ったりしたの?」
『おいはらったり、ってなに?』
「あー、えっと……出て行けって言うとか」
『だって、あそこはわたしとママのおうちだもん。知らない人は入れちゃダメって』
「だから物を投げたり電気を勝手につけたり消したりしたの?」
『わたし、そんなことやってないよ?』
「え?」
『え?』
はい?
『ものをなげたらこわれるんだよ? かべさんだっていたいし、おうちだっていたいんだよ?』
待て待て待て待て。
「ねぇちょっと待とうか。えーっと、じゃあ幽霊ちゃんは今まで知らない人があの部屋に来た時に、何をしてたのかな?」
『おじ……おにいさんにやったみたいに、でていけーっていったよ! でもみんなよりじょうずにできなくてね、いつもみんなが先にしらないひとたちをでていけーって……』
「まってまって? ちょっと待って。みんなって誰?」
『みんな、はみんなだよ? おにいさんのことジーってみてたじゃん!』
「ふぁ……?? え、あ、いつから?」
『ずーっとだよ? おにいさんが『にほどきめんどくせぇ~』とか『ねこどうがいやされるぜぇ~』とかいってる時とかはね、おにいさんのうしろにみんなずーっといたよ?』
「はいい??」
『あ、おうちついたよ! おにいさんはアイス買ってくれたからいい人だもんね! だからわたしのおうちに入っていいんだよ!』
幽霊ちゃんは俺の手をパッと放して、ボロい外階段をさっさと上がっていく。そして『はやくはやく!』なんて手招きしている。そんな幽霊ちゃんはすげえかわいいのに、その横にある……隙間が空いている俺の部屋の扉はすげえかわいくない。おかしいなー。部屋の鍵、ちゃんと閉めたはずなんだけどなー。
あれ、部屋の中から誰か覗いてるなー。俺以外にあの部屋に住む人って誰もいないはずなんだけどなー。しかも中から覗いてるの、一人じゃないなー。うわー、都会ってこわいなー。空き巣かなー。
木造アパート駅徒歩30分。築年数30年。間取りは1K。風呂なし。家賃2万円(+初回共益費3000円)
備考:事故物件(めっちゃかわいい幼女+α(たぶん二人以上はいる))
さてもう一度言っておく。
俺は今、引越ししたてで金がない。しかも幼女の幽霊に
幽霊ちゃんいわく『みんな』らしいので、多分幽霊ちゃん以外にもたくさんいると思う。
なにこれ。美少女幽霊攻略ゲーなの? すげえ泣きたい。もう『おじさん』でいいので実家帰りたいです。うえ~んおかあちゃ~ん!!
【真タイトル】
事故物件に住んだら幽霊が可愛すぎなんだがwww → ×
事故物件に住んだら俺が可哀想すぎるんだがwww → 〇
ちなみにこれ三か月前の話な。今現在も俺はこの部屋に住んでいる。毎日ドタドタうるせえし壁ドンは祭りの太鼓かっていうぐらい聞こえてくるし子供の騒ぎ声はするし……。耳元で『出て行け』って言うなら金出してくれよ……。
あまりにもうるせえので「てめえら毎晩毎晩うっせえんだよクソガキどもがああああ!」って叫びながら
俺がブチ切れた効果なのか部屋に撒いた塩が効いたのか知らんが、その日はめちゃめちゃ静かで久しぶりによく眠れましたとさ。
すまんが明日は朝からバイトだったことを今思い出した。消化不良だと思うが質問やらあれば後日k答える。。付き合っtくれてありgとな。お前らも早く寝rrrよ。じゃyおやすm
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