小話

死んだと思ったら以下略。

 死んだと思ったら異世界だった。以下略。

 俺の目の前に、ピンク髪の羽が生えた女の人がニコニコしている。多分女神だろう。


「はあ~い。それじゃ、まずはこの世界の説明を」

「だいたい分かります。普通の人間希望で」

「えぇっ!?」


 女神さんは驚いて無言になり、悲しそうな顔文字みたいな表情をした。うう……なんか申し訳ないことをした気がする。


「……人間のステータスとかって、どうなってるんすか?」

 

 俺がスッと手を上げて聞くと、女神さんの顔がパァと明るくなった。可愛い。


「えっと~。普通の人間は~、まあ、『ザコ』ですね~」

「ザコ」

「はい~。この世界ではゴミカスと同じぐらい~……いや、それ以下ですね~」

「ゴミカス以下」

「なので~、クソほどの役にも立ちませ~ん。すぐ死にま~す。だって、魔力もない『普通』だから~」


 この女神さん、ニコニコしながら汚い言葉をすらすらと吐いた。「ほかに質問は~?」とめちゃめちゃ可愛い笑顔を向けながら聞いてくる。

 え、女神さんだよね……? 口悪くない……? 怖いんだけど。


「じゃ~、『ゴミカス希望』ということで~。魔物の縄張りど真ん中だから、30分生きてればいい方かな~。良い異世界ライフを~」

「待て待て待て!」

「はい~?」


 女神さんが首を傾げる。くそう。めちゃくちゃ可愛い。口悪いのに。


「え、ええと……やっぱキャンセルで。いや、その、人間だけど、弱くなくて、魔力は多少あって、強くて、すぐ死なないような、あと、」

「そんなに多くは無理でえ~す。行ってらっしゃ~い」

「え――」


 ブォンと、足元に現れた穴に、俺は情けない声を響かせて落ちていく。

 ニコニコと手を振る女神さんが、俺の最後の記憶だった。


 で、二度目の目が覚めたら以下略。

 

「魔王様! 新たな勇者がまもなくここに来ます!」


 なんか、魔王になっていた。

 どうやら『元』勇者の。人間の。

 …………いや、人間だけどさ。

 なんか、違くね……?

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