2021年06月15日【ホラー】入学式/墓標/冷酷な殺戮 (909字を/34分で)
春は仲間が増える季節だ。襟がまだ糊で固まった服を着て、桜が並ぶ道を歩く。同じような者たちがたくさんいる。何人かはすでに仲良く笑顔を向け合っている。今日は新学期が始まって二日目だ。
アルファだけはその前に、逆方向へ向かう。道は狭まり、桜もなくなった。緑色の低木がときどき枝を飛び出させる、狭い道を進む先には、親友の墓標がある。来年も再来年もこの道を一緒に歩こうと話した仲で、アルファももちろんそのつもりだった。よりにもよってこの日付が命日となった。毎年かならず思い出す。あの日もこうして桜が輝いていた。
死因は銃による出血だ。当時の担任教師はときどき、映画の真似をしてクラスを賑わせた。それに乗る者も多い。あの日は「今日はみなさんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」と言って、前後や宣伝の台詞を知っているものと仲良く話を膨らませていた。知らない者らも、初めて知る映画がどんな話なのか楽しみにしている。
そんな教室に忍者が乱入してきた。
「サプライズ・ニンジャ・キル・ユー!」
そう叫んでイスラエルが誇る脅威の科学力を集結させたサブマシンガンから九ミリパラベラム弾を放った。映画でもあたり武器として活躍した銃だ。薙ぎ払うように撃つつもりだったが、連射速度を把握していなかった田舎者らしく、二列分の数人に命中するのみにとどまった。とはいえ命中した者には複数発が体内に衝撃を広げて、すぐに動かなくなった。
「サプライズ・ニンジャ・キル・ユー! ネェェェクスト!」
そう叫んでアメリカが誇るかなりの科学力を使ったサブマシンガンから九ミリパラベラム弾を放った。映画でもあたり武器として活躍した銃だ。形は先の銃に近いが、こちらの方が小さく、故にマガジンの長い直線が強調されている。今度は連射速度を加味した指切りを駆使し、教室にいた四〇人を二三人になるまで間引いた。
ふたつの銃を撃ち尽くすと、忍者は「アディオス!」と叫んで窓から飛び出し、木の上を走ってどこかへ消えていった。生き残った者もしばらくは放心して動けず、駆けつけた忍者退治専門の教師が全滅と見間違えるくらいだった。
来年も再来年も、この季節のアルファは親友の記憶と共にいる。
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