2021年06月10日【ギャグコメ】夏/車/残り五秒の子ども時代 (676字を/15分で)
アルファの誕生日は九月一日なので、夏休みの終わりと同時に年齢が増える。学校の方針で、未成年から成人になると途端に遅刻などの評価を下げる幅が大きくなる。今日は八月三一日で、宿題がまだ終わっていない。このままでは評価を下げる大義名分を与えてしまう。アルファはどうしても対処したい。
日付が変わるまであと三十分。宿題を終えるまで残りはたったの三問。しかしこの三問が曲者で、出典探しを要求している。とても三十分では間に合わない。
アルファは考えた。どうにかして時間の流れを遅くしたい。相対性理論を使うのでは、逆に周囲の時間が進んでしまう。この手は使えない。アルファの時間が早く、アルファ以外が遅く。いま求めている結果はそれだ。
残り十五分。名案は出ない。もし時刻が止まったらと考える。きっと地球の位置も止まり、月や太陽との位置関係が一定になる。夜が終わらないのだ。
ここでアルファはひらめいた。地球は宇宙空間をすごい速度で移動している。公転だ。具体的な速度は知らないが、ここでアルファ以外を高速移動させたら。
善は急げだ。アルファは自宅の車庫に向かい、父親のカスタム車を勝手に持ち出した。アルファは免許を持っていないが、公道を走らなければ合法だ。圧倒的なトルクで車が大地を蹴る。作用反作用の法則により、車は前進し、地面は後退する。ハムスターが回し車を蹴るのと同じで、地球の自転が加速する。
地球の移動速度が上がり、アルファだけは車の中でゆっくり移動している。加速が済んだ頃には八月三一日は残り五秒。どうにか間に合った。あとは時の流れが違う中で宿題を済ませる。
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