2021年06月02日 【大衆小説】砂/少女/きれいなかけら(1095字を/55分で)


 神族の生まれ変わりの赤ちゃんが同じく神族の生まれ変わりの父親と戦う小説、初めていきます。前回は母親と別行動になり高校へ潜入する所まで進めました。赤ちゃんパワーで高校生たちを跳ね除けて、校長室を占拠した。


「こちらアルファ、名簿の書き換えが完了した。これで明日から儂もここの生徒だ」


 赤ちゃんテレパシーで母親との情報共有を済ませた。


「よくやった。名実ともに高校生だ。入学おめでとう」

「なんだか、呆気ないな。本当にこれでいいのか?」

「私を信じろ。私もそうやって入学した。他の者も半分くらいはそうだ」

「正義の高校が聞いて呆れるな」

「青二歳め。正義とは書面による後出しで作られるのだ」


 テレパシー会話とは別の、足音が聞こえてきた。生徒たちが正義を試すために集まってきたのだ。アルファは赤ちゃん忍法で姿を砂に変えた。細かい粒子が床板のつなぎ目に入りこむ。掃除が面倒な状態だ。よほど熱心な生徒以外は見なかったふりをしたがる。


 アルファの体はまだ赤ちゃんなので、砂の量もわずかで済む。ほとんどが床板のつなぎ目に入り込んだ。余った分は机や棚の下や裏に収める。校長室の扉が開いたとき、すでにアルファの姿はなくなった。


「こちらチャーリー。挑戦者の姿なし。警戒を解除、哨戒に戻る」


 女生徒が無線機で放送室に連絡する。接続を終えたと確認したところでオリチャー発動。アルファは忍法を解除した。女生徒の背後を取り、次の赤ちゃん忍法を発動する。砂を高密度に圧縮して宝石状にした姿になる。これで女生徒に拾われれば、自分の足よりも長い足を借りての高速移動が狙える。


 本当は忍法の解除をせずに移行できた。ガバムーブにより発見される危険を負ってしまったが、今回は幸運にも変身完了まで気づかれずに済んだ。コトンと小さな音と共に足元に転がる。女生徒は確認し、綺麗なかけらなので、宝石化したアルファを拾い上げた。


 女生徒は上機嫌で三階に駆け上り、友人に見せびらかす。自分の足で上るなら日が暮れていたところだ。ここでショートカットをするチャートではなかったが、以前の橋での転落により状況が変わっている。本来の目的地の二階には、手間を加味しても三階から降りるほうがおそらく早い。


 ただし、女生徒がお喋りを始めるパターンを引いてしまった。発生率が八分の一のレアパターンで、通常プレイならば戦利品の獲得数が増える狙い目だが、今回は屑運に分類される。


「ねえチャーリー、この後付き合ってよ。新しい質屋を見つけたんだ」

「へえ、面白そう!ちょうど新しい宝石もあるしね」

「そうなのよ。ちょうどいいわね。今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました」



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