2021年04月08日【スイーツ(笑)】池/歌い手/増える小学校(1781字を/42分で)
お詫び
私はインターネット文化における「(笑)」について、
名詞の直後または文の途中で使った場合、
主に1985年前後生まれの人物が中心となる文化圏にて、
何かを貶す文脈で使うと認識しています。
その認識に至った理由は次の2点です。
(1) 前述した使い方を見る機会が多かった。
(2) その他の使い方を見る機会が少なかった。
ランダムに出た結果なのでそのまま使いました。
まずは非礼を詫びます。
―― お詫びここまで ――
池袋西口の駅前にある広場は待ち合わせにぴったりの場所だ。どの電車でもバスでも共通して着きやすいし、地上なので迷うほどの複雑さもない。加えて、見通しがいいので大雑把な指定でもどうにか合流できる。ここで立ち止まっているのは、待ち合わせ以外では、選挙活動がたまにある程度だ。
「待たせたね」
Bが軽い挨拶をする。今日はこれから、AとBが二人きりでパフェを食べる。さっそくBの案内で、広場から近いZデパートを昇る。高層の飲食店街の一角に、Aおすすめのパフェ店があるのだ。
店頭サンプルに数々のパフェが並んでいる。チョコレート、バナナ、いちご、ブルーベリーなど定番商品の他に、季節のフルーツを使ったパフェもある。器の最後までアイスクリームたっぷりのパフェと、途中にコーンフレークを含むパフェの二通りがあって、Aがおすすめする理由もここにある。街中にある多くのパフェはコーンフレークやスポンジケーキでかさ増しされている中、ここのパフェはアイスたっぷりなのだ。
「おいしい!」
Bはこの日の中でもとびきりの笑顔でスプーンを動かした。名店を求めて食べ歩いた成果は、味覚に加えて、紹介した相手の笑顔でもある。
Aもスプーンを口に運んだ。まずは上部にある、バニラのアイスクリームにチョコレートソースをかけた部分だ。表面を削り取るようにスプーンに乗せて、チョコレート多めで口に含む。舌に触れてすぐに芳醇な甘さが口に広がった。冷たく柔らかな半個体が体温によってみるみる柔らかく伸びていく。顎よりも弱い、舌の力で歯に押し付けて噛んだ。初めは押し負けるが、やがてすんなり進むようになっていく。そして敗者を喉の奥へと退場させる。口の中は勝ち抜き線だ。
次に口に入れたのはバナナだ。薄く長く切られたバナナのうち一枚を咥えて、前歯で半分にする。バナナを後回しにすると、どこかでバランスを崩して容器の外へ転落してしまう。バナナの味そのものはどこで食べても大差ないが、パフェのバナナには特別な付加価値がある。味覚は精神状態に左右される。たとえば、苛烈な拷問の最中に食べたものはほとんど味がわからなくなってしまう。脳が疲労困憊しているのだ。パフェを食べるときはその逆で、味蕾が渇望している。普段以上の甘さを探し出している。温度が低いと甘さへの反応が悪くなるが、その影響を踏まえてバナナの糖分を見つけていく。硬すぎず、やらかすぎず、直前のアイスと馴染んだ歯応えで口の中にとろけていく。
チョコブラウニーも同様に、バランスを崩す要因となる。バナナと比べてずんぐりしているので、まずアイス部分を食べて発掘してから、口の冷えすぎを防ぐ時期に食べる。パフェは積み重ね方の工夫で食者の体験をコントロールしている。フランスの宮廷出身たる所以であり、見た目が似ているサンデーとの違いだ。向こうはアメリカの大衆喫茶店的なおやつであり、気軽に、それこそ歩きながらでも食べられるのが魅力だ。パフェとサンデーは外見以外の多くを異にしている。
舌鼓の途中でも、食卓の外側から届く話し声を察知した。歌手のCらしき声と顔が、マネージャーらしき人物と打ち合わせをしている。Cといったら甘党で有名な男性で、彼のおかげで行きづらさを感じていた男性陣もスイーツ店へ集まりやすい雰囲気になったと口コミがある。そのCが話す内容に耳を傾けると、どうやらライブツアーで小学校巡りをするそうだ。時期は最初が二年後で、そこから三年かけて各地を回っていく。大人から子供まで人気者なので、卒業生や家族の参加も認めようと話している。確かに三年もかけたら、五年生が寂しい思いをする。
「B、聞いたね」
「もちろん。私もファンだから、やることは決まったよ」
「弟がいるんだっけ」
「それもあるけど、大事なのは親の方。小学校を増やす。子供のストックも十分にあるからね」
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