2021年03月19日【ミステリー】北/指輪/静かな可能性(866字を/46分で)
宮城県に新居を建てた。盆地の暑さから離れて、都会の雑踏から離れる。収入源は、成果物を電波に乗せて送って確保できる。
挨拶まわりをすると、似た考えの家族と出会った。新婚で新居を建てる。一年の違いでは状況が似ていて、少しだけ向こうが先な分、お得な情報や防げる苦労を教わる。距離はすぐに縮んだ。
ひとつだけ懸念ができた。男女の夫婦のうち女性のほう、Bが、Aの指輪をやけに見ている。Aが主人から贈られた指輪に対し、重視するのは選んだ理由だ。他の人物から見た価値には興味がなかったので、初めは注視の先を指や爪と思っていた。作業では邪魔になるので、料理をする日や、買い出しの日には、家に置いたままにしていた。そうしていた日があったのえ注視の先が指輪と気づいたのだ。
この指輪に何か、意味があるかもしれないので、詳しく確認した。宝石がついていないので、調べられるのはまず材質だ。Aは外見に詳しくないので。プラチナとかの、聞き覚えがある高級品が思い浮かんだ。もしくはその逆で、実はステンレスなどの安価なものと見破ったほうも考えられる。
主人によると銀だった。特筆するほどの高級品ではないとも付け加えたので、いよいよわからなくなった。主人によると、Bの側に経済的な不安を予想している。建物の外見は整っていても、庭の手入れが雑な部分があるので、どこかで手が回らなくなったように予想した。または、計画が甘かった場合だ。
そうなるとAは、今のうちに技能を伸ばしておく計画を始めた。静かな可能性が可能性のままになっている間に、相手の夫妻が持つ技能を育てて、収入に繋げられるようにする。生活への不安が解消されれば、盗みで得られるものよりリスクの方が大きくなる。
B夫妻はお互いに相手を対等なパートナーと認識している。呼び方こそ違うものの、行動はAと同じだ。真似したくなる技能を見せて、真似をさせる。いつでも確認できるよう、インターネットで読めるようにもする。
後に人気者となり大儲けをする、ハンドルネーム北石照代の誕生である。
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