2021年03月15日【王道ファンタジー】前世/橋の下/人工の時の流れ(1218字を/66分で)
橋の下からは子供が産まれてくる。
この現象に気づいた建築家たちは、徒党を組んで、あちこちに橋を建て始めた。どんな橋からどんな子供が産まれるかの法則を探っている。
橋よりも大きな種は産まれない。少なくとも成体が並べる程度の長さと、すれ違える程度の幅を必要としている。強度もやはり、成体が乗っても平気な程度に必要なようだ。
一方で、小型の種はどんな橋からでも産まれ得る。特に妖精は、すぐに隠れたり飛び去って見落とされていただけで、各所で毎日のように産まれては餌になっている。
この特徴が明らかになるにつれて、建築家たちは熱意を下げていった。頑丈で巨大な橋を作るため、あらゆる研究をしてきた。ゆくゆくは大陸間を繋ぐ橋や、星間を繋ぐ橋も作るつもりでいた。
ところがそんな橋を作るためには、その下から怪物の子供が産まれるリスクを飲む必要に迫られたのだ。大クラーケンによって大陸ごと沈んだ地域がある。歴史をわずかでも興味を持った誰もが最初に目にする記述だ。この影響で、小クラーケンは迫害を恐れて少食になり、少量のエネルギーで活動する能力が高まっていった。
大陸間の橋だけで大陸が沈むリスクがあるとなっては、星間を繋いだらどうなるか、火を見るよりも明らかだった。神話に登場する「もう一つの居星」は、ある日を境に交信が途絶えて、同時にこの星も一年間の「暗黒の氷河期」に包まれたという。ほとんどの記録が失われた中、今なら橋が原因と推測できる。
一方で、魂学者たちは別の観点から興味を示していた。エルフやリッチなどの、長命の種を中心とした彼らは、同時に生存する魂の変化に敏感だ。
魂ごとに適した器の大きさがある。肉体の死で魂が抜けると、その魂は次の肉体を探す。適さない器で産まれることはなく、過不足ない器を持てる肉体を見つけるまで彷徨いつづける。
その面で、橋の下から肉体が現れるのは興味深いことだ。魂が集まりやすい場所だとはわかっていた。わからなかったのは、なぜ集まりやすいかだ。こうして肉体が産まれてくるとわかったので、同じ理由で、墓地や廃屋にも注目している。
それらの謎を解き明かすため、魔導士連盟は世界中から有力者を集めて、時の流れを操作する方法を探り始めた。かねてより求めていたが、各方面からの反対と妨害工作を受けて凍結せざるを得なかったのだ。
興味を共有しているこの機会に研究を進めて、ゆくゆくは時を足掛かりに世界を牛耳るつもりだ。未来や過去への干渉は不可能とわかっているが、現在の進行を早めたり遅らせたりは目処がついている。たとえば、眼球の中で光を止めて視界を奪い、溜めた分を一気に網膜へ当てて視界を奪うコストを軽減する。たとえば、動脈の一部を早めて血圧を急上昇させる。各々が好みの使い方を夢想し、それを原動力にして研究に邁進している。
この研究は、橋の下出身の魔導士が参加したことで、飛躍的に進んだ。
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