第20話 心でつながろう。私たちは機械じゃない

 「これを!!」

 陛下がヘンテコ眼鏡を投げる。

 

 「いけない!!それを使っては!!」

 これ以上強化されたら、勝てない……!!

 何より、それでは……


 彼女は決意を決めたように、腰を丸め俯いた目で私をにらむとそれを装着した。

 「例え私が失われようと……私は……、」

 

==ここでBGMを挿入『--BRILUUS RE Y:EENA--』==

(https://on.soundcloud.com/b8mCe )


 機械音が静かに聞こえる。

 「ーー技術統制1528-0920-2203SCVーー認証完了。起動Nantlon

 「くッ情報が……」

 すると、彼女が腰を起こす。ヘンテコ眼鏡は青く、白く、ウェーブを描いている。


 「ヅィーガー!!戦闘プログラムを更新しろ!!」

 「どうやって!?」

 ヘンテコ眼鏡が別の模様を映し出す。

 「ーーデジタル影山光川流Ver.6.2.3ーーインストール完了」


 影山光川流!?確か天嶺皇国のレヌイ地方に伝わる、伝説の流派。架空のものだと思っていたが!?

 ホログラムが映り、グラサンのちょい悪ハゲじじいが登場する。

 「こんなこともあろうかと、お前さん専用にアップロードしといた🈓」

 「師匠!?」


 「ジジイはワシ一人で十分じゃ!!」

 こちら側のホログラムがにらみつける。


 まさか、温泉導師Gou'lau Hou'dvalai!?伝説上の人物では……しかし、こんなグラサンちょい悪風ヤクザジジイだったとは……となると、彼女は伝説の流派の伝承者……まずいぞ。


 「光川の太刀!!」

 鋭い光が超音速で伸びる。私はギリギリのところで躱したが、胸に刃がかすった。

 「ウッ」


 かまいたちのごとく光が舞、レーザーのような未来的な音と風を切る音が交互に聞こえる。私はいくつかを浴び、戦闘スーツがジジと黄色いビリビリを漏らしている。

 私も戦闘の名手を……、しかし一体誰?私はデッキにかけ、トップから1枚引く。


 「ケナイント・ルニャ。再び私に力を貸してくれるのか!!雷鳴槍トヨーッノワリア!!」

 手から出た稲妻が一本の槍に代わる。私は疲労困憊の体を起こし、両足をきれいにくっつけると、スクワットし飛びはね、回転しながら宙へと翻る!!

 「ギャオン!!」

 再び稲妻が嘶き、それが馬へと変わって、彼方から走りくる。私の股にそれが横から挟まると稲妻の勢いのまま突撃する。


 時系列を同じにして、

 「来い!木の葉突き!!」

 ひらひらと新緑の木の葉が舞う。視界が覆われると、一つの木の葉割け、刃が出てくる。彼女は腕をピンと伸ばし、体を前に着き出すと、自らを弾丸にする。


 二つの刃が交わる。

 相打ちである。


 「グワ!」「グゥ!」

 両者が膝をつく。

 「ジェニムロット!!」「ヅィーガー!!」

 プロアイスと陛下が声を上げる。


★★★


 そのまま少しの時が経つ。

 「こっちは片付いたんだが……」

 プロアイスがふらつきながら、歩み寄る。ボロボロになった盟友のその姿は少し人の心を震わせる。


 「そうだ、お前たちに渡すものがある……」

 私たちは皆疲労困憊だ。プロアイスは力を振り絞って、ブツを投げる。3つのパッケージがちょうど私たちのもとに届く。


 「これは……」

 陛下がそれを見ると

 「レイニエちゃんグミ。おいしくなって新登場。レモン味!?」

 ヴェルム様がそれに呼応する。

 「そんな、レイニエちゃんがレモン味のグミを出すなんてありえない!!」

 

 ありえないのか……(困惑)

 プロアイスがそっと囁く。「食べてみろ。」

 その眼には涙が浮かんでいる。冷徹な男の涙である。


 パッケージを切り裂く。

 これは……

 ヴェルム様のヘンテコ眼鏡が光る。

 「ーーデータ照合完了。レイニエちゃんグミ標準サイズに比べ小さくなっています。ーー」


 早速使いこなしてて草。

 「拝金主義的手法!?レイニエちゃんがこのグミを……?味が、なんか味にインパクトがないような……」

 陛下の厳しい食レポ。するとプロアイスが

 「目をつむり、機械ではなく、心の回線を繋げ。」

 ……


◆◆◆

~~レイニエちゃんグミ本社、社長室~~

「ガシャ」(外から鍵が開く音)


ヒェルニエ支社長ジェブヨヴォン「生産が足りませんわ。従業員のシフトを14時間交代にしなさい!」

レイニエちゃん「従業員がひんじゃうよぉ~~」

ジェ「従業員など使い捨てで結構!」

レ「疲れた人が、作業をすると、品質が……」

ジェ「品質など考えなくて結構!!生産第一!!」

レ「レイニエちゃんのグミは品質第一なんだぞ!!」

ジェ「わからないガキね。今日からグミは一日3粒よ!!考えが変わるまで味わって食べることね!!(ポイッ)」

レ「ひどいゆう!!」

ジェ「ガシャン」(鍵が閉められる音)

レ「あけてゆう!!」


レ「うう(ぽろぽろ)」

レ「あじうすいよぉ……」

レ「たぁすけて~~~~!!」

◆◆◆


 なんだ!?このビジョンは!!

 「そ、そんな--技術統制gelenst walst--な……」

 ヴェルム様が声を震わせる。どうやら皆同じビジョンを見ているらしい。

 「レ虐許せねぇ!!」

 

 「見えただろ。これは技術統制のデータリンクにはないはずだ。俺たちの心がつながっているから聞こえるんだ。彼女の悲痛の叫びが!!それは外しても死なん。俺たちは心で生きよう。俺たちは機械じゃない。機械にされている人々を救おう……」


 プロアイスがそう言うと、沈黙が訪れる。まもなくそれが終わると、陛下がヘンテコ眼鏡をはずす。それをみて、ヴェルム様も。そして周囲のシュッリルムスライトたちもみなそれを外していく……。


 「終わった、のか……?」

  

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