第19話 忠義の銀狼との戦い!!

 ★★★

 技術は人が用いるのであって、技術に人が用いてはならない。

 「ケルスト・ユガウトラ、技術最高主義バースト!!」

 ゼヌオント隊長が攻撃を受け、勢いよくのけぞると、壁に激突する。

 「く……、上位存在のモチベ不足によって、私の戦闘シーンが……カットされた……ガクッ」

 「ゼヌオント隊長、ご安心を。みねうちです。」


 私はぐったりとする彼女に近づき、ヘンテコ眼鏡付き戦闘ヘルムの裏側に手を回し、解除ボタンを押す。ヘルムが開くと、そこには涙目の彼女の顔があった。

 「どこがですか……」

 彼女は気を失った。


 私をとりまこうとするシュッリルムスライトがこの結果に動揺し、たじろいでいる。しかし、洞窟の奥からは次から次へとシュッリルムスライトの援軍が押し寄せる。

 「クッ、敵が多すぎるんだが!!」

 プロアイスは敵に囲まれ身動きが取れないようだ。


 私を取り囲もうとする兵士たちに、右腕を上げて制止の合図をすると、陛下がマントを脱ぎ捨て、前かがみになって近づく。

 「おのれ……」


 「陛下、ここは私が。」

 「あっ、おねがいします……」


 写真で見たヴェルム様の美しいロングヘアは今は度重なるゲリラ戦の果てに、短く、ボブカットになっているが、その銀の髪は依然として一本一本が輝くように揺れている。ヴェルム様がきれいな足取りで、しかしながら威風堂々とずかずかと前へ出てくると、陛下は自らが脱ぎ捨てたマントを拾って脇にそれていく。彼女はヘンテコ眼鏡をしていない!!

 

 「ヴェルム様!あなたは洗脳されていない。陛下の眼を覚ますことができるはずだ!」

 正直剣術の達人であるヴェルム様の気迫に押されていた。しかし、彼女は不屈の信念を持つ者と聞く。彼女なら……

 「私はあくまで陛下に従うまで」

 

 切っ先のような眼はまっすぐ私を見ている。

 「ではなぜあなたは!?」

 「私の忠誠心に道具など不要……」


 鋼の意思はあくまで陛下に従うというのか!!

 私は震える声でこう言うと、カードを手に取り、構える。

 「あなたならこの事態を止められたはずだ……!!」

 

 「不可能です。陛下は最新デバイスに目がないので止められません。」

 「まあデバイスはステータスっしょ~~」

 「そもそも金がないのに分割払い月3000リュインは実質ただとか言って、何でもかんでも最新デバイスを買おうとするからお金が貯まらないのですよ……何がステータスです……」

 

 ぶつぶつ言いながら、彼女は少しずつこちらにすり寄ってきているように見える。

 「……かァ!」

 突如として藍い閃光が走る。急すぎる!私の手元のカードは斜めの亀裂が入り、少しずつずれながらずり落ちていく。


 「何ッ……!?」

 銀の狼が鼻をスンと言わせ、その鋭い釣り目を細めてにやける。

 「この程度!?」


 私は彼女に挑発するようににやけ返した。(戦闘ヘルム越しには見えないが)

 「なんてな……」

 パラ、と地面に落ちたのは研鑽主義の提唱者「レアジェヴヨヴェ・ゲリティェッツァ」のカード。そう、敵の思想家だ。


 「馬鹿な!?」

 「あ~あ、手札事故かと思ったけど、ノイズが消えてよかった。」

 まあそんなルールなんてないが、挑発するだけ挑発してみる。


 「おのれ小癪な」

 そう言うと、銀色の残像を残して土煙だけが上がる。

 「速い!!」


 しかし、私はすでにデッキからカードを一枚引いていた。

 「ヴェル・ベランス。†人民の盾†Gagasdna Falmeva!!ヴェル・ベランス、彼はかつての主席でありながら、堕天使、そして慈善家としての一面を持つ。詳しくはGSVwikiを見てくれ!!」


 青い光刃Legit Risiid斬撃が盾にあたると、黄色い火花を散らして、ヴェルムがのけぞる。

 「グウッ」

 

 こちらの番だ。「†闇の力†を解放する!!」

 「カード、セット。コスモ、宇宙開拓投資!!」

 私のスーツに白と黒、堕天使の翼が生え、いくつかの羽を散らしてファサと浮かび上がる。その美しさは周囲を魅了し、敵さえもが宙を見上げる。


 「高所を取れば勝てると思ったか!?」

 ヴェルムは足に力を入れると、再び土煙が舞う。彼女の刃は中まで届き、私は盾で応戦する。彼女が着地した所を突いて、急降下。

 「†復活のカタルシス†!!」


 「ン゛!」

 彼女は光刃で受け止めたが、その威力に2m体がスライドする。しかし、再び姿が消えるとかまいたちのように何度も攻撃を繰り出してきた。

 強い……


 ★★★

 何度か、刃を交えたが彼女の戦いは瞬発力を使うもののようだ。私がここまで耐えるとは想定していなかったのだろう。

 「ハア……ハア……」

 この冷たい洞窟の中、彼女の吐息が白く上がる。私は戦闘ヘルムの中がムレムレである。髪の毛があったらキツかった。

 

 「ヅィーガー、お前がやられたら、オレは……」

 「わかってます!!」

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